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森林火災の消火におけるサーマルドローンとヘリコプターの連携運用方法

作成者: DJI Enterprise|10月 12, 2021

ドローンとヘリコプターは相容れないこのようなメッセージを何度も耳にしてきたことがあるかもしれません。これは、根拠のない主張ではありません。見栄えの良い写真や動画を撮ろうと、燃え盛る火災現場近くで無思慮にドローンを飛ばすような人がいれば、航空消防隊員の命に危険が及んだり、森林火災の消火活動の妨げになったりする恐れがあります。

2020年6月、米ネバダ州ポーヴィルで発生した森林火災の消火活動中、公共安全当局は現場空域を2機の正体不明のドローンが飛行しているという報告を受け、航空活動を停止せざるを得ない事態に追い込まれました。このような事件は珍しいものではありません。近年、航空消防活動中に民間のドローンが現場空域を飛行する事件が何度も発生しています。こうした状況を鑑み、米国の原野火災担当局と連邦航空局 (FAA) は、ドローン愛好家に対し、自然災害の現場近くでの飛行自粛を求める一般市民を対象にした特別なキャンペーンを展開しています。

主な問題は、ドローンが森林火災の現場に入ることではなく、無許可の民間ドローンによって消防ヘリコプターと搭乗隊員が危険に晒されることにあります。適切な規制と航空関係の組織は既に存在しているので、ドローンを消防隊の装備に組み込むことができれば、消火活動に大きな改革が起きるでしょう。

ドローンを活用した迅速な航空消火活動により、何千万ドルもの資産を保護

2017年に米オレゴン州ノースアンプクア川付近で発生した森林火災において、バーンアウト過程で起こった出来事をご紹介します。米国内務省 (DOI) は、地上隊員が状況を把握できるようドローンの活用に踏み切りました。ドローンの赤外線カメラにより、封じ込めラインのあちこちに飛火があり、まさしく消防隊が守ろうとしている地帯が危険に晒されていることがすぐに分かりました。

内務省は火災後の公式声明で、飛火を迅速に発見できていなかったら、5,000万ドル相当の資産やインフラが失われた可能性があると述べています。

このように、機動的ですばやく展開可能なドローンを導入することで従来の地上主体の消火手法が強化された事例は、前線の消防隊員と消防司令長には既に周知の事実です。彼らがドローンを近年の消防活動における最大のイノベーションと呼ぶのも、驚くべきことではありません。

 

ヘリコプターと消防用ドローンの連携作業の例

2020年10月23日、中国南部、汕頭市の山間の農村地域である南澳県で、激しい森林火災が発生しました。不安定な強風のため、炎は短時間で広がり,西部のHulu山、中部のGuantong駅、その駅東側の小さな丘の3箇所で火災が生じました。公共安全当局は、火事を封じ込めるために、全ての部隊を動員する必要がありました。

 

前線隊員の装備品の要は、DJI Matrice 300 RTKドローンでした。このドローンには、可視光センサーと放射分析赤外線センサーから成るZenmuse H20Tハイブリッドセンサー ソリューションが搭載されていました。強力な広角ズームカメラで広範囲をスムーズかつすばやく写しながら、サーマルイメージング カメラにより、厚い煙で覆われ肉眼では見えないホットスポットさえも迅速に発見できました。

さらに重要なのは、このドローンはサイズが小さく操作が容易なため、ヘリコプターでは難しい場所にも、隊員を危険に晒すことなく近づけたことです。

Helicopter x Drone Firefighting Flying Over Ground Crews

また、特記しておくべきこととして、南澳県の年間平均風速は8.5 m/秒であることも挙げられます。この環境では、普通のドローンなら、現場から司令センターへのライブ伝送は不安定で乱れがあり、断続的なものになっていたことでしょう。しかし、Matrice 300 RTKは過酷な環境で運用できるように設計されており、最大15 m/秒の風速に耐えられる能力を備えています。

詳細は、Matrice 300 RTKの比類のない性能を明らかにした6つの徹底的な天候条件テストに関する記事をご覧ください。

Matrice 300 RTKは、飛行時間がクラス最長の約55分で、伝送範囲は15 km、卓越した安全機能と信頼性を誇ります。H20Tを搭載することで、以下を実現することができました(H20T搭載時の最大飛行時間は約43分)。

  •       消防士に森林地の広範囲の鳥瞰図を提供する。
  •       危険なホットスポットの正確な位置座標を共有する。
  •      危険緩和と救助作業を支援する早期警告システムの役割を果たす。

デュアルセンサーとレーザー距離計による状況認識

10月25日の午前8時ごろ、Matrice 300 RTKは西部のHulu山の火事現場に向けて飛び立ちました。火元は煙で覆い隠されていましたが、赤外線カメラと可視光カメラの両方をデュアル画面表示モードで使用したことで、すぐに発見できました。また、ズームイン映像によって火の広がりを近距離ではっきり確認できたため、司令センターでリスクを把握し、適切に空中消火ヘリコプターを派遣することができました。

同日午後、東側の丘陵地で新しい火の手の発生が報告されました。報告後数分でDJI製のドローンが飛ばされ、状況の調査と火元の特定が行われました。ドローンが上げた成果は他にもあります。

Helicopter x Drone Firefighting Dual Mode Water Source

ドローンの映像から、火元西側約300mの地点に利用可能な水源があることが分かりました。H20Tのレーザー距離計機能を使用して、水源の正確な座標が地上チームに伝送されました。これにより、森林火災消防隊は水源と火災現場の間に送水管を設置し、効率良く、瞬く間に消火することができました。

ドローンを使った消火活動で二次火災と再発火を防ぐ

10月26日朝までに、南澳県の火災は最終段階に入っていました。この時点における消防隊員の主な懸念事項は、二次火災と再発火の回避でした。従来の人力での調査と報告では、進捗が遅く、また、火種の封じ込めが難しいという2つの問題がありました。

そこで、Matrice 300 RTKを再び高度90mまで飛ばし、火がくすぶっている地域を細かく捜索し、入念に再発火のリスクを調査しました。ドローンの広角レンズに枯葉や枯枝から煙が絶え間なく立ち上っている様子が捉えられると、オペレーターはすぐに20倍ズームモードを活用して鮮明な写真を撮影しました。しかし、そのときは日中で、煙によって視界が不明瞭であったため、オペレーターは赤外線サーマルセンサーに切り替えて、周囲の植物の温度を確認しました。

そして、これらの情報を合わせて再発火の可能性がある煙の場所を確定し、レーザー距離計を使用して、発火の兆しがあるホットスポットの正確な座標を司令センターに伝えました。正確な地理位置情報の受信後、直ちにヘリコプターが煙の発生地点の消火に向かいました。

Helicopter x Drone Water Drop

再発火の恐れのある地点の発見から初期段階での火種の除去まで、このプロセス全体にかかった時間はわずか1時間でした。これは、ドローンとヘリコプターが連携すれば森林火災の消火活動を劇的に改善できるという、はっきりした証左です。

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消防用ドローンで安全性と意思決定の両面を強化

ドローンによって、前線の隊員と、隊員が守る市民と資産の両方の安全性を向上できます。季節がめぐる度に森林火災の規模と勢いが大きくなっている現在では、そのような火災の1歩先を行く対策をすることが、ますます欠かせなくなっています。

DJI製ドローンは、過酷な気象条件でも飛行し、意思決定の質を向上させる信頼性の高いジオタグ付きデータを消防隊員に提供できるため、このドローンがあれば航空消防活動を次のレベルに引き上げられることは、何度も証明されています。

DJI製ドローンを導入した公共安全当局では、炎の動きの変化を把握し、リソースの増減の判断をすばやく行うことができています。ドローンの導入方法や、災害対応機関で適切なドローンプログラムを策定するための手順についてご関心がある場合は、無料の電子ブック『消防局におけるドローン導入プログラムの始め方』をダウンロードしてご覧ください。