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赤外線カメラ「DJI Mavic 3 Thermal」による熊の農作物被害対策の検証

作成者: DJI Enterprise|11月 27, 2024

  近年、害獣被害が増加傾向にある中、株式会社システムファイブと秋田スカイテック株式会社は共同で、農作物被害対策の検証をした。現場では、DJIコンシューマー機材を対策用に使用していたが、より迅速な探索と声による威嚇により被害を抑えられないかを検証した。今回は、DJI産業機の赤外線カメラ搭載ドローン「DJI Mavic 3 Thermal」と「Matrice 350 RTK」にDJI Zenmuse H30Tを搭載し実施をした。

熊を取り巻く環境

 保護政策により、熊の個体数は年々増加傾向にあり、食料不足時に人里に下りる習性があり、近年は日中の出没も増加している。その影響で、農作物への被害が深刻化しているが、従業員の安全確保のため、対策が困難な状況にある。その一方で、熊は学習能力が高く、一度侵入に成功した場所には繰り返し訪れる傾向があり、熊だけでなく、獣害の範囲は今後も拡大していくと予測され、何かしらの対策が求められている。

 

熊の個体数は年々増加傾向。食料不足時に人里に下りる習性があり、近年は日中の出没。

DJI Mavic 3 Thermalを使用

 赤外線カメラは表面温度を色で映し出してくれる、業務用の特殊なカメラですが、据え置きで使う赤外線カメラは高額で、誰でも持てるようなカメラではありません。そこで、今回の現場に即していると思われた機材である”DJI Mavic 3 Thermal”を現場に持ち込みました。この機材はソーラーパネルの点検や、外壁調査・人命救助などで幅広く活用されていますが、多くの動物は地面より高温になっていることが多いため、動物を見付けるために適していると考えました。最近では熊以外にも、鹿や鳥獣害対策でも使用されはじめています。
今回システムファイブのスタッフがお客様の現場に伺い、デモ飛行を実施しました。

 

DJI Mavic 3 Thermalの赤外線カメラ・可視光カメラの主なスペックは下記の通り。
・赤外線カメラ動画解像度
640x512@30fps
 ※5階建て以上の大型物件浮き・剥離外壁診断、太陽光パネル不具合診断にも使える解像度

・赤外線カメラ温度測定の精度
・±2°Cまたは±2%(大きいほうの値を使用)

・温度測定範囲
-20℃~150℃(高利得モード)0℃~500℃(低利得モード)

・可視光ズームカメラ倍率
・光学ズーム7倍・デジタルズーム最大56倍までの可能

  DJI Mavic 3 (スピーカー別売)

 

デントコーン畑の熊による食害

 大きなデントコーン畑。ドローンで撮影した画像を見ると赤枠のように所々に穴が開いています。これは熊が食べてしまった所です。かなり多くの穴が確認ができました。畑の周囲には、電気柵を立てて熊が中に入らないように対策を講じていますが、なかなか食い止められないのが現状です。熊は、弱点である鼻以外が電気柵に当たっても痛みを感じないとのことで、鼻に当たらなければ電気柵に対して恐怖に感じないそうです。

熊がデントコーンを食べたため、畑に複数の穴を確認出来た。(上画像 赤枠内)

  畑の周囲には、電気柵が立てられている。

  被害前のコーンの状態。

  被害後の状況。

赤外線カメラモードで熊を発見

 赤外線カメラで偵察していたところ、高温な場所を発見。送信機を確認すると、熊がデントコーンを食べているところを発見できた。熊だけが分かりやすく映るよう、色パレットをTint高温部分が赤色になる設定。この撮影後、30mほどまで高度を下げたが、熊は気づかずに食べ続けていた。「DJI Mavic 3 Thermal」の機体が小さいため、気付かなかったと思われる。

偵察していたところ、高温の場所を発見。

 

デントコーンを食べる熊の様子。

移動する熊の熱源を、赤外線で追跡

 後に、熊が立ち上がり移動を始めた。デントコーン畑の中に入ると可視光でのズーム画面では熊をはっきりと認識できない。しかし、熱源を感知できる赤外線カメラであれば、どのように熊が移動しているのか分かり、熊を見失わずに偵察できる。

赤外線カメラに切替え、熊を追跡する。

 

バッテリー切れの際、ピンポイント機能を活用

 熊の偵察中にバッテリーが切れそうになってしまった。このような際は、「ピンポイント機能」が役に立つ。ピンポイントを打つと、飛行画面上とマップ画面上でピンが常時表示され、簡単に打つことができる。ローバッテリーで離陸場所に着陸させる前に、この機能を使うことで、バッテリー交換後、再度同じ所に戻りやすくなるためだ。

   コントローラー上で簡単にポイントが打てる。

 

  

スピーカーで警告音を出す。

 「DJI Mavic 3 Enterprise Series PART 02-Speaker」を使用して、実際に警告音を鳴らしたらどのようになるのかを確認。約15mまで高度を落として鳴らしてみると、熊が歩く(逃げる)スピードが少し上がった。

熊の個体により反応が変わるかもしれない。

Matrice 350 RTK+DJI Zenmuse H30Tで検証。

同現場にて、別の機体 Matrice 350 RTK+DJI Zenmuse H30Tでも検証を行った。「DJI Mavic 3 Thermal」が赤外線カメラの画像解像度 640×512に対し、「DJI Zenmuse H30T」で撮影したデータは1280×1024なので、画素数は4倍近く差がある。そのため、「DJI Zenmuse H30T」の画像の方が鮮明に映るので、素早く動くものも簡単に確認できた。「DJI Matrice 350 RTK」は大型ドローンで羽音が大きく、熊が逃げてしまう可能性を懸念し、現場では「DJI Mavic 3 Thermal」を熊の探査に使用した。

熊の個体により反応が変わるかもしれない。