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ドローンによる外壁調査の工数削減と 解析精度の向上

作成者: DJI Enterprise|11月 28, 2024

 東京都に本社を置くドローン・フロンティアは、ドローンを使った点検業務を専門としており、赤外線カメラを搭載したドローンと、ロープアクセス法による打診調査を併用し調査を行っている。建築基準法が改正され、打診点検の他に、赤外線カメラをドローンに搭載した調査が認められ、目視では捉えきれない外壁の内側の状況や変化の調査が可能となった。今回は同社が実施した外壁調査における現場に同行し、お話を伺った。

外壁点検作業の現状

 外壁調査の目的は、接着力が弱くなった外壁が剥落し、人にあたってしまう可能性があるため、事故を未然に防ぐため定期点検を実施し、安全性を確保することだ。調査方法としては、これまで“打診法”と呼ばれる、打診棒などの検査器具で外壁を叩き、発生する音の高低によって外壁の剥離部を判断する方法を使用。高層階の調査には足場を組んで作業するため、費用が高額となっていた。

   これまでは「ロープアクセス法」(上記右側)と、「打診法」(上記左側)で調査を行っていた。

 

ところが、令和4年に建築基準法が改正され、打診点検に代わる方法としてドローン搭載型の赤外線カメラによる調査が正式に認められた。これにより、ドローンを使って外壁を広範囲に撮影し、画像を解析してレポートを作成できるようになった。従来では1ヵ月以上かかる工数も、ドローンを使用すれば、現場調査は12日で完了できるだけでなく、足場設置による美観の損失も防げるため、喜ばれているという。

  「大幅なコスト削減により、修繕とは別で“調査”だけのご依頼が多くなりました」と、小林氏。

 

サーマル解像度の向上で、見えなかったひび割れも確認できるように

 今回の現場では、温式タイル仕上げの建物の外壁調査を依頼され、Zenmuse H30Tを使用して、赤外線および可視光カメラによる点検を行った。同社の吉澤氏は、以下のように述べている。「私はドローンパイロットと赤外線画像解析を担当しております。今回、新しく導入したDJIzemH30Tではサーマルの解像度が向上し、前モデル(DJI zenmuse H20T)では確認しにくかった状態も、確認ができるようになりました。また、温度差の分布も明確になり点検がしやすくなりました」

Zenmuse H20T (上記左側) とZenmuse H30T (上記右側) の比較。解像度が向上し、温度差の分布が明解になった。 

進化した可視光カメラで、細かい確認が可能に

赤外線調査ではノイズと呼ばれる外壁の浮きではないが、温度が高くなる現象があり、ノイズの判別のために、必ず可視画像を撮影する必要がある。H30TではMatrice30TやH20Tと比較して,ズームカメラの画質がよくなり、壁面の状態をより細かく確認できるようになった。打診法による人の感覚に頼るデータではなく、診断の元となる写真データがあるため、エビデンスとしても優れていているという。

   外壁の浮きではないのに温度が高く見えてしまう現象(ノイズ)は、壁面の汚れによって温度上昇を引き起こしている可能性がある。

解像度が上がり、異常箇所の抽出が明確に

 点検では、DJI Thermal Analysis Tool 3.0と、解像度の上がったZenmuse H30Tを活用した。また、温度幅の調整が簡単になり、解析がしやすくなった。異常箇所の抽出も明確になり、レポート作業の工数削減にも貢献できた。同社の吉澤氏は、「DJI Terraを使って壁面のデータを3Dモデルとして提供しています。デジタルコンテンツとしての保管が可能で、視覚的に見やすいデータとして非常に優れています。今後、外壁調査分野において3Dモデルの納品が一般的になると考えています」と述べている。

 

短期間で調査が完了、施設利用にも影響が無かった

 調査を依頼した星槎国際高等学校の青柳氏は、以下のように述べる。「今回は生徒の安全を確保するために、校舎の外壁調査を依頼しました。実際にドローンでの点検を見て、安全確保のため校舎の現状調査は実際に出来ており、普段は見えない箇所も見られ、とても良かったと思います。短時間で調査が完了し、学校施設利用にも弊害が出なかったので非常に良かったです」。

調査を依頼した星槎国際高等学校は、通える通信性がコンセプトな高校。  

 

点検の概念をドローンで変えていきたい

 赤外線による外壁調査業務では、ドローンを使用した現場での調査を1日から2日で完結するが、解析のレポート作成に最短でも10日から2週間ほどがかかるため、いかに解析業務の工数を圧縮できるかという点が重要になるという。小林氏は以下のように述べている「業務の効率化が出来れば、事業として利益率アップはもちろんのこと、今より短納期で品質を上げながら、調査費用の減額などが目指せます。将来的には法定点検だけでなく、より高頻度の調査を行うことが出来るようになり、安全性の向上から、新たな需要創出にも貢献できると思います。今後も、Zenmuse H30Tを活用した業務効率化の方法について検討してゆき、外壁の全面点検は、大規模修繕時にのみ行うという点検の概念を、ドローンで変えてゆきたいと思います」。