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Mavic 3Eを使用した屋上点検のワークフロー

作成者: Kyle Miller|3月 11, 2024

米国全土に大型商業ビルが建設され、安全で効果的な屋上点検の需要が大幅に増加しています。

すべての屋上は固有のもので、点検ニーズも様々です。漏水や穴の処置には多額の費用がかかり、建物内部に他の問題が生じる可能性もあります。大規模な商業ビルにはHVACシステムやソーラーパネルが設置されており、これらはすべて定期的に点検を行う必要があります。

この10年の間にドローンが普及し、屋上点検の手法も変化しました。もはや、はしごを使用して屋根の上で苦労する必要はなくなったのです。ただドローンを飛ばすだけで、利害関係者や意思決定者と共有できる貴重な情報が簡単に収集できます。

この記事では、ドローンを使用した屋上点検に必要な手順を詳しく見ていきます。

目次

データの収集

  1. 考慮すべき要素を理解する
  2. ミッションゴールの設定
  3. センサー設定の確認
  4. 飛行計画を立てる
  5. データ撮影
  6. 手動による点検

データの処理

  1. Tサーマル/ビジュアルデータセット
  2. 地上基準点/チェックポイント
  3. DJI Terraの設定

データの表示

  1. サードパーティの分析プロバイダー

データの収集

考慮すべき要素を理解する

屋上は建物により形も大きさもさまざまです。点検は住宅の屋根の場合もありますが、多くは商業建物が対象です。プロジェクトの範囲を確認し、対象に合った最善の方法を選ぶことが重要です。

屋上のサイズは、考慮すべき要素の1つです。屋上が小さい場合は、数分(または数秒)で詳細な情報を取得できます。大型商業ビルでは長時間の飛行が必要になるため、対象に応じて計画を立ててください。

ミッションを計画するうえで、建物の高さも重要な要素となります。ビルの上部までテスト飛行をすると、建物の高さを確認し、より効果的なミッションを計画することができます。

もう1つの重要な要素は、建物の周囲を把握することです。Mavic 3 Enterprise(以下、Mavic 3E)は、O3 Enterprise Transmissionによるドローンとの安定した接続状態を使用して、Omnidirectional Obstacle Avoidance(全方向障害物回避システム)とAPAS 5.0により、厳しい環境下でもドローンを安全に飛行させてミッションを完了します。常に安全な飛行を心がけ、点検する建物の隣に駐車場がある場合は、頭上の飛行に関するFAAのガイドラインを遵守していることを確認してください。ミッション計画時は、緑色の飛行ラインが建物の外周から大きく外れていないことを確認してください(これが要素である場合)。 

ミッションゴールの設定

屋上にはさまざまな考慮すべき要素があるため、プロジェクトの目標を理解することが重要です。 目標ごとに、異なるデータソース(ビジュアル、サーマルなど)や精度/解像度の要件が必要になる場合があります。

屋上点検に関する主な事例は次のとおりです。

  • 亀裂/漏水の検出
  • HVACの点検
  • ソーラーパネルの点検
  • 排気装置の点検
  • 測定ニーズ

サーマルセンサーが必要な事例(ソーラーパネル点検、漏水の検出、HVAC点検など)では、多くの場合、日没直後に飛行を行う必要があります。これにより直射日光による熱負荷はなくなりますが、屋上/ソーラーパネルは日中の太陽光でまだ暖かい状態です。当然ながら、夕暮れ時は屋上の亀裂をビジュアルセンサーで発見することがほぼ不可能なため、同じ屋上で(日没前と日没後に)2回の飛行が必要になることがあります。 

漏水の検出の場合、雨が降った直後にドローンを飛ばさないようにしてください。排水/漏水箇所を把握するには、雨が降ってから24時間以上(最長1週間)待機することをお勧めします。溜まった水が問題の原因である場合、雨の直後の飛行では熱画像の解析が難しくなります。 

建物の大きさの測定も重要です。初めての飛行では、超大型商業ビルの屋上から20フィートの高さでの飛行は避けてください。時間がかかり過ぎるだけでなく、経験の浅いパイロットには危険な飛行となる場合があります。 Mavic 3ERTKモジュールを装着すると、42分間の飛行時間による大規模なミッションが可能になります。状況に応じて計画してください。

屋上点検では、データの精度要件も1つの側面として考慮する必要があります。屋上にベースステーションのあるターゲットの測定は困難になりがちですが、Mavic 3EとRTKモジュールがあれば、地上基準点を設けることなく、センチメートルレベルの精度でデータを取得できます(精度の検証にはチェックポイントが必要となります)。ほとんどの事例は点検を想定したもので、データの正確性はそれほど重要ではありませんが、データを他の現場のデータと合わせる必要がある場合、RTKは優れた選択肢となります。RTK, PPK, Cloud PPK技術は、高精度のプロジェクトの実現に役立ちます。

センサー設定の確認

カメラ/センサーの設定を選択する際には、いくつかの要素を考慮する必要があります。通常は自動設定でも良好なデータの取得に十分ですが、ビジュアルセンサーの設定に関するガイドラインをお探しの場合は、次の項目が参考になります。

  • 日中の飛行ではシャッター速度を1/1,000以上に設定する。夜間の飛行では、被写体のブレが大きな要素となるため、屋上がはっきり視認できる間に、できるだけ速くシャッタースピードを設定してください。
  • ISOを活用して、シャッタースピードのバランスを調整する。昼間はISOを自動のままに設定しておくのが最善ですが、夜間の飛行でシャッター速度を速くする必要がある場合、ISOを活用することで画像の「明度を上げる」ことができます。
  • 画像のフォーマット:JPG
  • 画像比4:3
  • メカニカルシャッター:オン
  • キャプチャ用センサー(熱画像をキャプチャする場合):全て

  • サーマル点検では、カメラビューの全温度域で色が大きく異なるため、カラーパレットをアイアンレッドに設定することをお勧めします。

また、最初は時間をかけて屋上上で短いテスト飛行を実施することをお勧めします。これは、飛行前に最適なカメラ設定を見つけるのに役立ちます。屋上は予想よりもはるかに明るくなります。最初のウェイポイントでカメラ設定を手動でロックすると、画像が「白飛び」することがよくあります。

飛行計画を立てる

屋上点検の最も一般的な方法は、対象が重複する写真を十分に撮影し、屋上の高解像度マップと3Dモデルを作成することです。Mavic 3Eシリーズのドローンを使用している場合、DJI Pilot 2アプリでこれを実行できます。 

ミッション計画を立てる際は、ミッションオプションのマッピングを選択するのが最善の方法です。ここでは、ミッションマッピングの開始方法について説明します。

特に屋上点検で推奨される設定は次のとおりです。

  • フロントラップ率70%とフロントラップ率80%の、デフォルトのオーバーラップ設定を使用します。ビジュアルセンサーで高品質の3Dモデルを再構築するにはこれで十分です。
  • 熱画像が必要な場合、サイドラップ率とフロントラップ率を80%に設定することをお勧めします。
  • 高度の選択には、[Flight Route Altitude](飛行ルート高度)と[Target Surface to Takeoff Point](目標面から離陸地点)の両方のスライダーを使用します。住宅の屋根の上の飛行に最適な高度は、屋根から25~50フィートです。 大規模商業ビルでは、解像度を達成できない場合があるため、屋上から50~100フィートの高さで十分です。短いテスト飛行を行って建物の高さを確認することで、ミッションに最適な高度を設定できます。たとえば、住宅の屋根の高さが25フィートであった場合、[Target Surface to Takeoff Point](目標面から離陸地点)を25フィート、[Mission altitude](ミッション高度)を50~75フィートに設定します。商業ビルで屋上の高さが50フィートの場合は、[Target Surface to Takeoff Point](目標面から離陸地点)を50フィート、[Mission altitude](ミッション高度)を100~150フィートに設定します。
  • [Target Surface to Takeoff Point](目標面から離陸地点)スライダーを使用すると、ドローンの離陸後でも正しいオーバーラップを設定できます。 Mavic 3Eの4/3インチセンサーを使用すると、幅広いダイナミックレンジで驚異的なディテールを撮影できます。
    • Mavic 3E による地表変位(GSD)の推定値をいくつかご紹介します。
      25 フィート 0.2 cm/ピクセル
      50 フィート 0.4 cm/ピクセル
      75 フィート 0.6 cm/ピクセル
      100 フィート 0.8 cm/ピクセル
       
    • Here are some GSD estimations with M3T:
      25 フィート 0.26 cm/ピクセル(ビジュアル), 1 cm/ピクセル(サーマル)
      50 フィート 0.53 cm/ピクセル(ビジュアル), 1 cm/ピクセル(サーマル)
      75 フィート 0.78 cm/ピクセル(ビジュアル), 1 cm/ピクセル(サーマル)
      100 フィート 1.05 cm/ピクセル(ビジュアル), 1 cm/ピクセル(サーマル)

  • 3Dモデル再構築が目的の場合、 Mavic 3EシリーズのSmart Oblique機能を利用できます。飛行中にジンバルを制御して、直下(NADIR)方向だけでなく斜め方向の画像も自動で撮影できます。
    • 重要:熱センサーを使用したソーラーパネルの点検が目的の場合、正確な温度の測定に「Smart Oblique」はお勧めしません。
  • その他の考量すべき点は、飛行方向と速度です。 Mavic 3Eは4/3インチのメカニカルシャッターにより、画像精度を保ちながら歪みを最小限に抑え、すばやい撮影が可能です。7秒の撮影時間で、従来型よりもずっと早く調査を行えます。Mavic 3Eでは、飛行速度はそれほど重要ではありませんが、 Mavic 3Tによるサーマル点検が目的の場合は、最高速度を10 mph(~4.4 m/s)未満に制限し、サーマルセンサーの画像のブレや不正確な測定値を最小限に抑えてください。
    • 飛行方向を計画し、視覚画像のみを撮影する場合は、最も効率的な方向に飛行させることをお勧めします。屋上のサーマルソーラーパネルの点検時は、データ処理で最良の結果を得るために、パネルと平行に飛行させることをお勧めします

データ撮影

建物を把握し、プロジェクトの範囲を設定してミッションのマッピングが準備できたら、撮影の準備が整っているはずです。 

ドローンは常に目視可能な範囲に維持してください。これは屋上の撮影時には難しい場合があります。ドローンの飛行計画とFPVカメラを注視して、人の頭上を飛行していないことを確認してください。ミッション完了後は、ドローンをホームポイントに戻すか、空中停止させます(ミッション終了時の設定により異なります)。 

手動による点検

自動ミッションを完了したら、(オプションで)点検対象の追加データを撮影できます。下に示す手動キャプチャ画面には、手動点検を最大限に活用する多くの機能があります。 Mavic 3EMavic 3Tはどちらも56倍ハイブリッドズームセンサーを搭載し、右側のスクロールホイールでセンサーのズームレベルを調整できます。 

Mavic 3Tで手動点検をする際、DJIではターゲットを十分に把握できるように、ズームカメラとサーマルカメラを並列に表示することができます。画面上の[SBS]ボタンをクリックすると、両方のビューを同時に表示することができます。

Mavic 3T でズームセンサーを使用している場合、リンクズーム機能を使用して、ズームとサーマルセンサーを同じズームレベルにロックすることをお勧めします。

データの処理

サーマル/ビジュアルデータセット

点検対象の撮影を終了したら、データを高品質の2Dオルソモザイクと3Dモデルに変換します。DJI Terraを使用すると、優れたデータセットを簡単に取得できます。DJI Terra内でデータを処理する詳しい手順については、以下の動画をご覧ください。 

DJI Terraでデータを処理する簡単な手順は次のとおりです。

  • 写真/フォルダーをDJI Terraにインポートします
    • ビジュアルデータセットとサーマルデータセットの両方を処理する場合、データセットは個別に処理することをお勧めします
  • 出力タイプ(2Dマップ、3Dモデル)とファイル拡張子(Tiff、Objなど)を選択し、座標系を定義します(NTRIPサービスを使用している場合)
    • 空中三角測量を実行します
    • この時点では、オプションで再構築する境界を変更できます。これにより、ステッチする考慮すべき要素のみにフォーカスしたい場合に、処理に要する時間と出力データサイズを削減できます
  • 追加手順:地上基準点のデータをインポートし、地域に適したEPSGコードを選択します。詳細は、この「地上基準点(GCP)ガイド」を参照してください。
  • 2Dマップと3Dモデルの再構築手順を実行します

DJI Terraは、放射ステッチ出力を保証せず、生画像のみを保証します。

完了後、精度レポートを表示してマップの精度を確認できます。これで、データの表示とエクスポートの準備ができました。

DJI Terraウェブページの一番下に表示されている、Terraの1ヵ月トライアルをぜひお試しください。

データの表示

DJI Terraには、データの表示と分析に役立つ複数の機能があります。アノテーションツールを使用して亀裂や漏水箇所を測定し、マウスで3Dモデルの全方向にナビゲートできます。長時間表示する場合、DJI Terraには3Dモデルを360度無段階で回転させるツールがあります。

屋上点検の一般的な出力を見てみましょう。 

漏水や亀裂、熱の異常を探す場合、3Dモデルの代わりに2Dオルソモザイク画像を解析することが一般的です。3Dモデルは点検対象の全体像の把握には便利ですが、サードパーティのサーマル点検分析ツールでは、3Dモデルではなく生画像を分析する場合がほとんどです。顧客からデータセットを求められている場合に備え、DJI Terraがサポートするツールをいくつかご紹介します。エクスポートしたデータ全てに地理座標系が与えられており、希望するサードパーティ分析ツール(DroneDeploy、Raptor Mapsなど)にインポートできます。

DJIはThermal Analysis Tool(熱解析ツール)もご用意しています。このアプリでは、生画像と処理済みデータセットを分析し、温度の測定値を完全に把握できます。Eric Olsenは、熱画像データをRJPGに変換し、Flirの熱解析ツールにインポートできるツールを提供しています。

サードパーティの分析プロバイダー

点検データ分析の自動化に役立つ専門的なソリューションは数多くあります。亀裂や漏水の検出、ソーラー点検などの自動化を希望される場合は、ワークフローの自動化に役立つ次のソリューションプロバイダーを参照してください。

DroneDeployは、世界中で5億エーカーを越える土地のマッピングや処理を行うクラウドプロセッシングプロバイダーです。同社のツールは、さまざまな業界(建設、農業、石油/ガス、太陽光など)で利用されています。DroneDeployでは、屋上点検に特化したツールやレポートを提供しています。

DroneDeployの屋上レポートでは、処理された3Dモデルから屋上の寸法を取得できます。この場合の事例は、どちらかというとソーラー屋上の設置計画と屋上寸法の把握を想定したものであり、損傷箇所の検出自動化を想定したものではありません。 

DroneDeployでは、熱画像マップの問題特定に便利な放射熱画像の分析ツールも提供しています。左側のヒストグラムを使用するだけで、温度範囲を変更できます。また、複数の飛行日を並べて、違いを比較できるツールもあります。 

損傷箇所の検出が主な目的の場合、Loveland InnovationsとEagleViewの2社が損傷箇所の自動検出に最適な選択肢となります。ヘアラインの亀裂だけでなく、ひょうや倒木などで生じた小さな穴やくぼみなどの損傷まで検出できるツールを多数提供しています。Loveland Innovationが提供するIMGINGウェブツールで分析した次のデータを、Eagleviewのレポートページのサンプルと合わせてご覧ください。

主な事例が熱画像の場合、熱画像の解析サービスにおいてRaptor Mapsがよく知られています。同社はこれまでに50 GW以上のソーラーパネルを分析しており、ソーラーパネル分析分野で定評のあるツールを提供しています。Raptor Mapsのソーラーパネル点検については、以下のツールのスクリーンショットを参照してください。 

ありがとうございました

本ワークフローをお読みいただきありがとうございます。屋上点検に関する詳細は、以下の記事を参照してください。