ドローンを使った測量では、GCP(地上基準点) を効果的に設置することが何より大切です。GCPは、場所の境界を定めるとともに、その中にある様々な物の大きさを正しく測定する上で役立つもので、測量の基礎としての役割を果たします。また、マップの正確性を高める上でも重要です。
もっとも、GCPの効果を最大限に高めるためには、正しく配置することが欠かせません。GCPの数が少なすぎると、測定結果が不正確になるリスクが高まります。かといって、GCPが多すぎて近接してしまうと、画像全体を正しく生成できなくなる恐れがあります。ここでは、その最適なバランスを見極める方法をご紹介します。測量の手法としての有効性が確認されていますので、ぜひご利用ください。
GCP(地上基準点) とは
GCPは、既知の場所の情報(ジオイドモデルやGPS座標などを使って定義しておく座標)を持たせて地上に配置する基準点です。データの収集を始める前に既知の座標を選んでマーキングしておくと、測量の正確性が高まるほか、プロジェクト全体の枠組みとしても役立ちます。
GCPに使うもの
GCPをドローン測量に役立てるためには、これから説明する2つの条件を満たしている必要があります。まず、各GCPが、周囲の地形に紛れてしまわないような高コントラストの色になっていなければなりません。周囲の地形と色が近すぎると、写真でGCPを見つけるのが難しくなってしまいます。また、設定した座標に合わせる中心点を明確に定義しておくことも必要です。これには、直角に交わる2本の線を使います。
測量では、スプレーで印を付けるか、明るい色で4つの四角形から成るチェッカーボードのような模様の専用パッドを使用するのが一般的です。スプレーの方が簡単かつ安価ではありますが、正確性の面で問題になる可能性があります。よく知られているとおり、測量ではわずか数センチの差が結果に大きな影響を及ぼすことがあるからです。スプレーを使って引いた線が太いと、意図した地点に該当し得る範囲が何センチにも及ぶという事態にもなりかねません。生まれる差の1つひとつは比較的小さなものではありますが、各GCPでこのような憶測に基づく作業をしていたら、大変な作業になるでしょう。パッドがない状況では、せめてGCPを「X」ではなく「L」で示すようにしましょう。角のところに正確な座標が来るようにするわけです。
GCPとマニュアルタイポイントの比較
GCPもマニュアルタイポイントも、実世界に置かれているものを測量に使うという点では変わりませんが、両者は別物です。マニュアルタイポイントは、複数枚の空撮写真にわたって確認できる特徴的な地上物です。これをDJI Terraをはじめとするマッピングソフトで指定すると、その情報を基に画像をつなぎ合わせて写真測量地図を作成することができるようになります。GCPとマニュアルタイポイントはどちらも測量に不可欠なものですが、実際の座標点に合致するのはGCPのみです。
GCPがドローン測量にもたらす効果とは
必要なのが写真測量またはLiDARで作成した地図のどちらであるかを問わず、空撮による地図の正確性を最大限に高めようと思うのであれば、GCPが有用です。測量でGCPが重要なのは、GCPが絶対確度を以て設定されている、すなわち、GPS座標のような何らかの厳密な値に対応しているからです。これに対して、相対確度とは、地図を絶対座標に照らし合わせることによって見つかる他の点のことを言います。つまり、現実世界に既知の場所をいくつも設定しておくことによって、各点の間の距離と地図全体の大きさを把握しやすくなるのです。
もちろん、GCPはパズルの1ピースにすぎません。ほかに重要な要素としては、たとえばGSD(地上画素寸法)があります。これは、GCPにより把握した現実世界の大きさを地図に変換する際に使用する計算です。GSDは、デジタル画像上の隣り合った2つのピクセルの中心間の距離を表します。正確なGSDがないと、収集したデータを使える地図に落とし込むことができません。GSDの計算でも、GCPの場合と同じくわずか数センチのずれがプロジェクト全体に大きな影響を及ぼすことがあります。
GCPの設置
測定結果を正確なものにするためには、対象の場所にGCPをいくつか設置するだけでは不十分です。GCPは、境界線や地形の範囲が分かるようにしつつ、できる限り均等に設置する必要があります。対象の場所の特徴によるのはもちろんですが、指針として役立つルールがいくつかありますのでご紹介します。
GCPの数
正確なドローンマップを作る上で必要なGCPの数は、対象の場所のサイズと地形の範囲によって異なります。専門家の間では通常、GCPを5つ以上使用することが推奨されていますが、20程度使われることもあります。ただ、注意していただきたいのは、GCPの数が増えれば増えるほど結果が良くなるというわけではないという点です。米ネバダ州運輸局 (Nevada Department of Transportation) がDJI Phantom 4 Proを使って実施した試験では、GCPの数が約10に達した時点で、GCPをさらに追加しても効果が薄くなっていくという結果が得られています。
GCPを選択するときは、均等な配置を心がけてください。直感的には、測量で特に重要なエリアに集中的にGCPを配置すると良いように思えるかもしれませんが、そのようなやり方では正確性が低下することがあります。狭い範囲にGCPを多数配置して、残りの部分が十分にカバーされていないと、マップのキャリブレーションや、座標の集まりをもっと大きな画像に適合させる作業が困難になります。最悪の場合には、エリア全体を飛行し直さなければならなくなるかもしれません。
間隔
GCPは、その間隔を比較的均等にすることのほか、間隔自体の大きさにも注意が必要です。GCPが互いに離れすぎていると、モデリング ソフトウェアでGCP間にデータ点を補間するのが困難になります。各GCP間の距離は、最大でも400 メートル(約1,312 フィート)に留めましょう。もっとも、通常はもっと小さな間隔が望ましいとされます。上に挙げたとおり、GCPを置きすぎないようにすることは大切ですが、GCPの間隔が大きくなりすぎると、今度はカバーできていない範囲が発生したり、モデルが不正確になったりする可能性が出てきます。
置く場所
GCPは、測量の対象となる場所の境界が定まるように使うことが重要です。できれば、それぞれの角に1つずつ配置したうえで、中心にも1つ配置するのが理想です。これほどシンプルな配置で済む場所はまれですが、カバー範囲を検討する上ではこの考え方が有効であることは変わりません。
最後に考慮するのが、対象とする場所の地形の全体を捉えられているかどうかです。現実的にGCPの配置が可能な場所のうち、高度が最高の地点と最低の地点にそれぞれGCPを配置してください。ただし、「自然に発生した」地点に頼りすぎるのは避けましょう。このような場所は、GCPを配置するのに適しているように見えても、GCPの均等な配置に寄与するわけではないからです。
正しいドローンとペイロードで正確な測量を
GCPをうまく配置するだけでも大きな進展ですが、それだけでは十分ではありません。測量という仕事をやり遂げるためには、ドローンとカメラペイロードを正しく選択することも必要です。広大な場所を素早く測量したい場合には、Matrice 300 RTKがお勧めです。高速飛行が可能でバッテリー駆動時間も長いほか、一度に3つのペイロードを取り付けられるため、最小限の飛行回数でデータを収集できます。
DJIでは、写真測量とLiDARの地図のどちらを作成するにしても、ぴったりのカメラペイロードをご用意しています。Zenmuse P1は写真測量用カメラペイロードの主力製品で、低ノイズ、高感度の45 MPフルサイズセンサーと、24/35/50 mmの交換可能な単焦点レンズが付いています。
これに対して、LiDARが必要な測量では、Zenmuse L1をお勧めします。手頃な価格でありながら精度の高いIMUを備え、枝葉が密集する場所も見通すことができるので、非常に複雑な地形の測量にも問題なく対応できます。なお、どちらのカメラも、DJIが誇るマッピングソフトウェアDJI Terraと簡単に統合できます。
出典
https://www.propelleraero.com/blog/how-to-optimize-your-ground-control-point-placement/
https://propelleraero.typeform.com/to/QacVNx
https://www.pix4d.com/blog/why-ground-control-points-important