3DSurveyplus 合同会社の堂城川 厚さんは、レーザースキャナーを使った計測業務に黎明期から関わり、最先端を歩んできました。現在では多彩なドローンを駆使した計測を数多くこなしています。これまでの経緯と、ドローンの導入に関するアドバイスを伺いました。
もともとは発電所などの大型プラントの設計エンジニアだった堂城川 厚さんは、大手企業のサラリーマン時代、設計の手法がデジタル化していく時代を過ごした。
「製図板が CAD に替わり、3D CAD になるという切り替わりの時期でした。そのうちに計測ツールとしてレーザースキャナーが導入され、私が担当者になりました。2002 年頃です」
レーザースキャナーの将来性を確信した堂城川さんは、その後に独立。2006 年には 3DSurveyplus を起ち上げる。順調に業績を伸ばしながら、レーザー計測や 3D データの作成のほか、360°カメラでの撮影なども業務に加えていった。
業務にドローンが加わることになったのは、発電所の建屋内の撮影を依頼されたことがきっかけだった。
「レーザー計測のほか、360°カメラで建屋内の撮影をしました。その際にほかのチームがドローンを使って撮影をしていたのですが、資料としてその写真を見たとき、感動したんですね。ドローンに大きな可能性を感じました」
新しい技術には常に興味を持って取り組んでいる堂城川 厚さん。ドローンに興味を持ってからすぐに入手して、業務での利用の可能性を探り続けてきた。
すぐに探して入手したが、当時の機体は安定しておらず、業務への導入は難しい状況だった。
「当初はレーザースキャナーや 360°カメラを搭載できないかと考えていたのですが、なかなか難しいことが分かりました。その後、DJI から Phantom 2 や 3 が登場しましたが、カメラ性能が限定的だったので本格的な導入には至りませんでした」
さまざまな機体を試したが、大きな転換点となったのは、Inspire 1 の登場だったという。機体が大型化して安定し、カメラも高性能になったことで、まずは空撮用に導入した。また、業務用ドローンの保険が整備されたことも大きな理由だった。
「使い方としては、現場の空撮です。軽飛行機やヘリによる空撮に比べて圧倒的に手軽なこともあって、お客さんに提案すると依頼されることが徐々に増えていきました」
ドローンを業務に組み込むことでコスト削減と売上向上を実現
その後も堂城川さんは、新しい技術が業務利用できるとなると、積極的に設備投資してきた。目指していたのは、やはり空からの 3D スキャンだった。Matrice 600 シリーズなど、ペイロードに余裕のある機種も登場したが、レーザースキャナーを搭載するのが難しい状況は変わらなかった。
「そのうちに、撮影した画像から点群データを生成できるソフトが登場し始めました。それであればドローンで撮影した画像を元に計測することも可能ではないかとトライし始めたんです。結果的に、建物の中など詳細が必要な部分は地上からレーザースキャナーで計測し、屋上や屋根などの高所や、外構などの比較的大まかにスキャンするところはドローンを使って撮影。その上で、点群データを合成するという手法がうまくいき、業務として実施するようになりました 」
現在の計測業務では、必要に応じて、地上からのレーザースキャナーでの計測データと、ドローンで空撮したデータを組み合わせて使用している。
当初は1割にも満たなかったドローンを使っての計測業務だが、今ではドローンのみを使った業務で全体の4割を占める。地上型レーザースキャナーと組み合わせた業務を入れるとさらに増えており、ドローン事業は飛躍的に伸びていった。
「以前はオマケのような感じで実施していたドローンでの撮影ですが、写真測量を行うようになってからは、追加の料金をいただけるようになりました。従来のレーザースキャン業務にドローンを組み合わせることで、売上も大幅に向上しました」
これは、単にクライアントの支出が増えるという話ではない。発注側にも受注側にも、それぞれにコストメリットが生まれているという。
「 地上からのレーザースキャニングのみを行う業者に依頼する場合、地上からスキャンできない部分が出てきたら、別途ドローンを使う業者に依頼することになります。そうなると基本作業料などが重複してコストが上がるだけでなく、同時に作業できないため作業期間も長くなってしまうのです。さらに両者の点群データを合成するとデータ責任の所在も曖昧になるので、トラブル回避の面でもリスクがあります。両方をこなせる業者であれば、たとえドローンを併用することで料金が上がったとしてもまとめて依頼できる分、全体のコストは下がりますし、期間も短縮できます。データ責任の所在もハッキリするので、クライアントにとってもメリットが大きいのです」
現在は最新機種である Matrice 300 RTK を導入し、検証と業務での実践を重ねている。同機の大きなメリットとして、安定性や性能の高さに加え、バッテリー駆動時間の長さがあると堂城川さんは言う。
「バッテリー駆動時間が伸びたことで、作業効率が劇的に上がります。例えば鉄塔の点検作業でも、以前は1回のフライトで点検できないことが多くありました。そうなると、いったん作業を中断して機体を戻し、バッテリー交換後に再び機体を移動して撮影する必要があります。これは重複作業が増えるので、非常に効率が悪い作業です。バッテリー駆動時間の長いMatrice 300 RTK では、1回のフライトでできる作業量が多く、大きなメリットになっています」
現 Matrice 300 RTK の大きなメリットのひとつは、バッテリーの駆動時間だという堂城川さん。「1 回のフライト時間が伸びたことで、作業の手間が大幅に軽減する場面があります」
レーザースキャンに加え、ドローンについても黎明期から試行錯誤を重ね、業務導入を進めてきた。多くの知見を持つ堂城川さんの元には、さまざまな業者からドローン導入についての相談が集まってくる。
「導入に踏み切れない理由として多いのは、ドローンを扱うには高度な操縦テクニックが必要だと思い込んでいるケースです。もちろん技術や知識はあったほうがいいのですが、現場によっては、ドローンを上昇させて前進し、写真を撮って戻ってくるという単純な作業だけで業務が大きく変わることもあります」
堂城川さんの場合、ドローンの使用を相談された際には、よく現場に機体を持ち込んで説明するそうだ。
「今動いている現場があれば、そこで飛ばしてみましょうと提案をすることもあります。今まで下から撮っていた法面などを『上から撮るとこんな感じです』と見せてあげると、『これなら分かりやすい』『この角度から見たかった 』といった反応が返ってくることが多いです。また、それを見ながら新たな課題に気付いたり、その場で解決策を探ったりしているうちに、ドローンを導入すれば何ができるのか、活用イメージがどんどん明確になっていくでしょう。実際に飛ばしてみることが、最も説得力がある方法なんです」