史跡のデジタルツイン作成：スペイン、トレドのアルカンタラ橋

 　トレドはスペイン中央にある都市で、歴史的な重要性と魅力的な建築で知られています。古代ローマ帝国まで遡る何千年もの歴史があり、イベリア半島の発展に重要な役割を果たしてきました。この地域一帯には、ローマ帝国時代に建設された多くの建造物が当時のまま残されています。アルカンタラ橋は、当初の姿を留める、文化的に最も重要な最古の建造物の1つです。このような建造物の保存は、文化遺産の維持に不可欠であり、最新技術がこうした建物の記録と調査に革新的な方法を提供します。この記事では、DJI Mavic 3 Enterpriseを使用して、トレドの歴史的な橋の正確なデジタルツインモデルを作成するプロセスを紹介します。このモデルは、保存取り組みを支援するだけでなく、インフラ管理に重要なデータを提供する調査者の能力向上にも役立ちます。

飛行前の準備：コンプライアンスと計画

　ドローンミッションの開始前に、現地当局に確認して、すべての飛行規制順守を確保することが重要です。これは、トレドのような歴史地区や人口密度の高い地域では特に重要です。必要な承認の取得後、プロジェクトの最初のステップとして、DJI Mavic 3 Enterpriseを使用して、ミッション計画のために大まかなデータを取得しました。

ミッション計画

　ドローンパイロットは、この特定のミッションにDJI Mavic 3 Enterpriseを使用し、大まかなデータを収集してミッション計画を作成しました。収集した情報に基づいて5つのミッションを計画し、それぞれのミッションで、橋をさまざまな側面から撮影できるようにしました。

５つのミッション

幾何学ミッション：橋脚を片側から撮影

　最初のミッションは、橋脚の片面から幾何学的な詳細を撮影することを焦点としました。正確に再構築するには、各橋脚を360度から把握することが必要なため、これは非常に重要なミッションです。DJI Mavic 3 Enterpriseの安全を確保しながら、できるだけ橋脚に接近して飛行させ、全角度をカバーしました。

北側の勾配ミッション

　橋の北側で、勾配ミッションを行いました。このようなミッションは、構造物の垂直面撮影に特に有用です。勾配ミッションは、ミッションをライブ配信し、必要に応じてリアルタイムでモニタリングや調整を行えるため、ドローンのパイロットに有益です。

南側の幾何学ミッション

　勾配ミッションの後、南側の幾何学ミッションに戻りました。このアプローチでは、橋全体をあらゆる角度から完全にスキャンしました。

勾配ミッションと幾何学ミッションの選択

　さまざまな構造特性に対処するには、建物特有の特徴に応じて、勾配ミッションと幾何学ミッションを選択します。例えば、勾配ミッションは垂直要素の撮影に適しており、幾何学ミッションでは柱などの円筒形や複雑な形状の全体像が提供されます。構造物の詳細な画像を撮影できるよう最善の判断をするには、正確なミッション計画が不可欠です。

手動ミッション：橋の下側の撮影

　プロジェクトの要は、手動操作で橋の下にドローンを飛行させることでした。このタスクには、高度な飛行スキルが必要でした。ドローンのパイロットは、0.7秒間隔で撮影を行うようカメラを設定し、ドローンを橋の約5メートル下を飛行させて、わずかに傾けてデータを収集しました。この手動ミッションでは、異なるミッションのデータを組み合わせて、包括的な3Dモデルとしてまとめるために不可欠でした。

安全上の考慮事項

　ミッションを通じて最も懸念されたのは、安全性を最大限確保することでした。厳しい環境でも高い精度と信頼性で操作できるよう設計された最先端の安全機能を備えるため、DJI Mavic 3 Enterpriseがプロジェクトに必要不可欠な資産であることが証明されました。高度な障害物回避技術が装備されるため、このドローンは、ケーブル、タワー、橋の複雑な構造要素など、潜在的な障害物を簡単に検知し、回避することができました。

　ドローンのパイロットが橋周辺でDJI Mavic 3 Enterpriseを操作している間、リアルタイムのアラートにより重要な情報が提供され、状況の認識が向上しました。このシステムは、環境をインテリジェントに分析し、突風や不測の乱気流、近くの障害物などの潜在的リスクをパイロットに警告します。こうしたタイムリーなアラート機能で、迅速な意思決定が可能になり、パイロットが飛行ルートを素早く調整し、潜在的な危険から安全距離を保つことができます。

　さらに、DJI Mavic 3 Enterpriseの安全機能は、障害物回避とリアルタイムアラート以外に留まりません。強力なGPS測位システムと正確な高度制御により、常に安定した、正確な飛行が実現しました。この技術を活用することで、ドローンを事前にプログラムされたルートに沿って飛行させ、橋の複雑な構造要素の詳細情報を正確に3次元で把握することができました。

　DJI Mavic 3 Enterpriseの安全機能は、ドローンのパイロットに求められる優れた信頼性レイヤーを提供するだけではなく、ドローンそのものとその周辺エリアの安全性も確保します。このミッションでは安全性が特に重視されており、事故が起こることなく進行し、比類ない効率と安心感で橋の調査のような複雑な3Dミッションを完了したため、　DJI Mavic 3 Enterpriseの高度な安全機能の信頼性と有効性が確認されました。

データ処理：3Dモデルの作成

　ミッションが完了し、すべてのデータが収集されると、36 GBに上る3,500枚の画像データがDJI Terraにインポートされ、処理されました。約5時間かけて処理を実施し、完全な橋の3Dモデルが生成されました。これは、同じような機能を持つ処理ソフトを大幅に上回る速さです。

DJI Modifyによるモデルの改良

　DJI Terraで最初の3Dモデルを生成した後、チームは包括的な3Dモデル編集ソフトであるDJI Modifyでモデルを調整しました。より正確で精度の高い3Dモデルを得るために、フローティング部品の削除や水面の修正などの機能が使用されました。DJI Modifyの詳細については、こちらをクリックしてください。

モデルの共有

　DJI Modifyを使用する利点の1つは、シンプルなリンクから3Dモデルを共有できることです。この機能は、調査員やエンジニアが他の専門家と協力したり、調査結果を関係者に提示したりする場合に便利です。

インフラ管理における3Dモデルの利点

　スペインのトレドにあるアルカンタラ橋のような歴史的建造物のデジタルツインモデルの作成には、さまざまな利点があります。このような3Dモデルは、古いインフラを調査する際に、潜在的な問題の特定や維持／修理プロジェクトの計画に極めて有益なツールとなります。調査員にとって、この技術は、信頼性の高いデータ収集と提示方法を提供し、正確な情報を求める顧客や他の専門家とのコミュニケーションを円滑にするものです。

アルカンタラ橋を背景に作業中のイヴァン、アイヴィング、サミュエル

建造物のデジタルツイン作成に関する詳細は、以下をご覧ください（別の記事へのリンク）