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カリフォルニア州の山火事「キャンプファイア」のドローンによるマッピング

作成者: DJI Enterprise|9月 14, 2021

アメリカ合衆国カリフォルニア州北部、シエラネバダ山脈の麓にある町、パラダイスとマガリアはかつて27,000人を超える住民で賑わうコミュニティでした。しかし、2018年11月8日に発生した山火事「キャンプファイア」により、ものの数時間で何もかもが一変してしまいました。火事の影響を受けた人々は何千人にも及び、100人近くが死亡、数千人の人々が家を失いました。 

家を失った人々を支援するため、カリフォルニア州史上最悪の山火事で焼けた土地の上空を、ドローン編隊が2日間にわたり飛行し、被災状況の画像を記録しました。最終的に、17,000エーカーで70,000枚の画像を収集し、1兆4,000億ピクセルものデータを得ました。

詳細な画像やマッピングは、家の状況を判断する材料となり、保険金の請求を円滑に進めるのに役立ちます。また、復興作業員、解体作業員、都市プランナー、科学者、研究者、そして一般の人々にとっても状況を理解するのに役立ちます。 

北カリフォルニアの16の緊急対応機関がタッグを組んで行った518回の飛行は、アメリカ史上最大規模のドローンによる災害対応となりました。16のドローンチームを率いたのは、アラメダ郡保安官事務所でした。ストックトン警察、コントラコスタ郡保安官事務所、メンローパーク消防局が最も多くのチームメンバーを派遣し、ユニオンシティ警察、ヘイワード警察、スタニスラウス郡保安官事務所からも部隊が派遣されました。サンフランシスコ市警察は空域からの管理を監督しました。マッピング用の飛行に加え、Hangar社の支援により、160枚を超えるインタラクティブな完全360度のパノラマ写真が作成されました。また、Survae社により、パラダイス町の主要道路に沿ってジオリファレンス(幾何補正処理)された動画が撮影されました。この何層にもわたるデータセットは、記録的な速度で処理されました。

ドローンが撮影した写真や動画は全てジオリファレンスされ、マップ形式に変換されました。住民は対話型AIアプリを使って、自宅の状況をチェックできるようになりました。ビュート郡の当局は、多くの住民が自宅を確認するために火災地域に入る許可が下りる前に、マップと空撮画像を一般公開しました。ビュート郡のキャンプファイアマップはこちらからアクセスできます。

ビュート郡保安官、Kory Honea氏は次のように述べています。「このマップは私たちが対応しようとしている災害の深刻さを人々に理解してもらうのに役立ちます。非常に困難なタスクであることを理解してもらえたらと思います。また、保険金の請求に役立つ情報を提供できたら嬉しいです」

ミッションのセットアップ

チームが現場に到着して作業を開始した時、まだ辺りには煙が充満し、火災現場からもうもうと煙が立ち上がっているような、過酷な大気状況でした。隊員たちはマスクを装着し、常に様々なリスクや危険に気を配りながらミッションをこなす必要がありました。 

現地のミッション計画司令部は、チコにあるメンローパーク消防局チームの会議室に置かれました。メンローパーク消防局の突入部隊は、すでに10日間にわたってキャンプファイアで建物を守り、燃えさかる炎の壁と闘っていました。消火活動が完了した際、隊員の中から、機材と情報を交換し、マッピングミッションを担当するUAVチームの一員として2人が再配置されました。

DJIのソフトウェアソリューションパートナーであるDroneDeploy社のサンフランシスコ本社内にあるデータ処理センターに、大量のデータが物理的に連日届けられました。データ処理班は、ドローンが撮影した画像とデータを受け取ってから24時間以内に、詳細でインタラクティブなマップを作成しました。これは、災害時にドローンチームが連携して対応したものとしては史上最大規模であり、また、膨大な量のデータを最速で処理したものでもあります。 

サッカー場13,000面分のマッピングへの挑戦

マッピングゾーンの細分化

サッカー場13,000面分の広さに相当する17,000エーカーのエリアをカバーするためには、多くのフライトが必要でした。課題の1つは、各エリアをどのように適切に分割し、地図を作成するかでした。 

エリアは主要道路に合わせて作成することになりました。また、後から別々にマッピングされたエリアを重ね合わせてうまく結合できるよう、エリア間が十分に重なるよう配慮しました。 

最終的に、広大な面積は各250~300エーカーから成る30以上のエリアに分割されました。1つのエリアをマッピングするのに必要なバッテリーは4~6個でした。その後、マスターマップが作成され、全UAVの情報とチーム派遣のためにUAV司令部で利用されました。

ドローンプラットフォームの標準化

濃い煙が充満し、電力供給がない災害地域で、LTE/4G接続もほとんど得られない中、背の高い木々が残る17,000エーカーの平坦ではないエリアを、マルチロータードローンでマッピングするというのは、後方支援的には悪夢です。 

チームは、Phantom 4 Pro V2.0のみを使用することによってプロセスを標準化しました。このドローンは、サイズとコストの割にパワフルなカメラを搭載しています。1インチセンサー、有効画素数20MP、視野角84°、メカニカルシャッターを備えています。

電力需要

マップのオーバーラップを確保しながらこれだけの面積を飛行するためには、実に518回のマッピングフライトが必要でした。つまり、518個のバッテリーを充電する必要があったということです。満充電されたPhantom 4 Pro V2.0バッテリーを十分な数用意するのは重要ですが、それだけではまだ課題の半分しか片付いていません。無線コントローラーやタブレットも、いずれ充電が必要になります。ほとんどのUAVオペレーターは、手元に6~8個のバッテリーしか持っていないため、これは大きな問題でした。マッピングミッションチームの計算では、最良のシナリオで1つのバッテリーがマッピングできる面積は45~50エーカーでした。そのため、マッピングのタスクを効果的に実施するためには、各チームに十分な数のバッテリーと充電器を配備することが不可欠でした。 

データ管理

フリートミッションで常に問題となるのがデータの管理です。特に、16のチームがあり、さらに個々のドローンがあるとなると、問題はなおさら大きくなります。各パイロットが従うべき標準化されたオペレーションを決め、データの取得、保存、転送方法について、全てのチームが標準化されたプロトコルに従うことが重要です。これは、ミッションに加わった16のチーム全ての緊密な連携によって実現しました。

しかし、より大きな問題は、大量のデータをどうやって実用的な情報に変換し、様々なGIS製品に統合するかということでした。これについては、ScholarFarms社のGreg Crutsinger氏が、緊急対応チームと多くの機関の間を取り持って作業を調整するという重要な役割を果たしました。 

現地のチームは、70,000枚以上の画像と500GB近いデータをサンフランシスコにあるドローンソフトウェア会社DroneDeploy社に送り、データ処理を依頼しました。現地からはインターネットにアクセスできなかっため、UAVチームはデータの入ったハードドライブをサンフランシスコに持っていく必要がありました。DroneDeploy社の共同創業者であるJono Millin氏と営業及びエンジニアリングチームのメンバーは、夜を徹して、翌日の朝まで画像をアップロードしました。翌日、エンジニアリングチームがクラウド上に大量の画像データを管理する大規模な処理クラスターを構築した後、データが75枚のマップとして提供されました。最終的に、キャプチャされた1兆4,000億ピクセルのドローン画像は、1枚の1,000億ピクセルのマップになりました。

このマップは、直ちに救助隊や救急隊員によって使用されました。消防チームは、最新の画像を元に被害のチャートを作成し、次のステップを計画しました。このマップは、現場にいる可能性のある行方不明者の捜索のために捜索チームや救助チームによっても使用されました。山火事の被災者もまた、マップを有効利用しました。町全域がマッピングされているため、従来の方法では保険金の請求に数日から数週間かかっていたところ、家の所有者は画像を保険会社に提出して、すぐに保険金を請求することができました。また、多くの人々がこの画像を使用して、被害にあった家族のためのFEMA米国災害救済基金にアクセスしました。

教訓

ドローンは、大規模な山火事や火災の消火活動で重要な役割を担い、赤外線サーマルカメラセンサーにより夜間の作業を助け、火災後も災害対応、捜索、復興、損害評価を支援する重要なツールとしても役立ちます。 

複数の部署やドローンチームが関わる大規模なミッションでは、ミッション中はもちろんのこと、ドローンが撮影したデータを処理して利用される段階に至るまで、連携とオペレーションの標準化が非常に重要になります。 

結果的に、ビュート郡の救援マップが立ち上がるまで、最初のマッピングドローンのから配備から48時間もかかりませんでした。これは史上最大のドローンチーム連携による災害対応であり、大規模データ処理の最速記録であることは間違いありません。これからも、ドローンは重大ミッション中の対応時間を短縮しながら、救急隊員に対する安全性を高めていくことでしょう。 

ドローンにより、政府系機関が公共サービスを提供する方法を大きくも小さくも変えつつあります。公共安全の分野におけるドローンの利用は定着しつつありますが、新しい技術の導入に積極的な政府系機関や関係部署では、交通運輸、公共事業、プランニング、環境事業をはじめとするその他の分野での活用方法を模索しています。ドローンプログラムの立ち上げの詳細や、最善の方法、コミュニティのニーズに対応するためにドローンをどのように活用するかを検討するには、包括的なレポートをダウンロードしてご確認ください。