DJI – ユーザーストーリー

足場やクレーンを必要としないドローンが 高所作業の課題を解決する

作成者: DJI Enterprise|4月 1, 2021

 

遊園地などの遊戯機の管理を行うサノヤス・ライドでは、目視の点検業務をドローンで代替して行っています。この業界にある、高所での危険な作業、熟練工の不足という慢性的な課題。同社では以前から、それらを解消する可能性をドローンに見出していました。

高所での長時間の作業と熟練工不足  

課題解決のためにドローンを検討

さまざまなアトラクションが用意された遊園地では、来園者が思う存分楽しめるよう、遊戯機の日々の点検管理が重要な業務となっている。サノヤス・ライド株式会社は、そんな遊戯施設の運営管理を請け負っており、園内に並ぶ大小の遊戯機の点検を行っている。

特に大型の遊戯機の点検は、時間をかけた高所での作業となる。例えば観覧車の場合、備え付けのハシゴを使って上まで登り、中央で回転しているベアリングの状況の確認、カゴに延びているアームの状態や電気配線のチェックなどを行う。コースターなどの場合も、やはり実際に上まで登って、走路や巻き上げ用のモーターの点検、チェーンの摩耗などの確認を実施する必要がある。その際に必ず行うのが、各所の部材の状態を目視でチェックする作業だ。同社の工事部の三宅朋文 部長は、点検作業の課題について次のように語る。

「重要な点検項目に、遊戯機の摩耗やサビ、変異の確認があります。これは実際にその場所まで上って、近接目視で確認する必要があります。当然ながら高所作業が多く、時間もかかります。落下の危険と隣り合わせなので、回数も時間もできるだけ減らしたい作業です」

人材育成の問題もある。高所での作業を伴う業種では人材不足が問題となっており、遊戯施設の点検も例外ではない。

「高所での点検作業は、慢性的な熟練工不足の状態にあります。作業環境に人材不足と、常に業務に課題を抱えている状況だったので、少しでも改善する可能性があれば何でもやってみようと考えていました」

そんな中、ドローンを使った点検を行う業者の存在を知り、ドローンの説明を聞く機会があった。その際、まだ具体的ではなかったものの、三宅さんはドローンの可能性に気付いたという。遊園地は基本的にオリジナルの遊戯機が設置されており、施設によってサイズや設置方法、部材などが異なる。また、直線的な構造物が少なく、足場をかけられないことがほとんどだ。そのため、現場によっては、大型重機などを用意して作業する必要があった。

「中には何百トンという巨大なクレーンを用意しなければ作業ができない現場もあって、点検にもかなりのコストがかかります。ドローンであれば、大型クレーンや足場の設置などが不要になります。そういった部分を置き換えるだけでも、点検作業にドローンを導入するメリットがあると考えました」

ドローン導入を推し進めた三宅朋文 工事部部長。業務環境については課題があると考えていたため、「少しでも可能性があれば何でも試してみよう」と考えていた。

 

高解像度のズームカメラを使うため点検作業にMatriceシリーズを導入

ドローンに課題解決の可能性を感じて導入の検討を始めたが、外注すると、どうしてもコストメリットが生まれにくい。ならば自分たちでやってみようと、2016年から講習会への参加や飛行トレーニングを始め、2017年にDJI Mavic Proを購入して業務への導入を模索し始めた。

「実際に飛ばして撮影をしてみると、ドローンを目視点検に使うことはできそうだと感じました。同時に、Mavic Proのカメラでは私たちの点検業務に不足している点もありました」

遊戯機の点検においては、クラック(ひび)、サビ、部品の摩耗や破損などを近接目視でチェックする。金属製で複雑な形状をした遊戯機にドローンを近づけるのは難易度が高く、離れたところから撮影する必要があったが、そのためにはより高い解像度のカメラが必要だった。

「点検作業にはより高解像度で、ズーム機能が付いたカメラが適していると感じました。さらに動画での点検も必要だったため、DJI Matrice 200と光学30倍ズームを備えたDJI Zenmuse Z30を組み合わせて、業務に導入することにしたんです」

なお、目視点検では、下から上を見上げる視点も有効だ。サノヤス・ライドではその後、DJI Matrice 210 V2も導入した。

現在はドローンを使って、各所の目視点検のほか、現状を把握して長期的な修繕計画を立てるための各遊戯機のデータ収集を行っている。その過程において、Matrice 200210 V2の導入は、コスト以外にもハッキリとしたメリットがあったそうだ。

「ドローンを使った点検作業によって、人による目視点検では目が届きにくかった部分まで確認することができるようになったんです。例えば、急流滑りのアトラクションの遊戯機の検査をドローンで行ったところ、通常の検査では目の届かない場所に腐食している部材が見つかりました」

そのほかにも視点が変わることによって気付いたことが多くあり、業務の改善に結び付いた。

写真や動画による目視点検から3D点群データの利用へ

点検作業にドローンを導入することにより、安全性や利便性、精度においてもさまざまなメリットが生まれたが、その一方で、ドローンの運用における課題も見つかった。特に、撮影後のデータの管理には苦労している部分があるという。

「撮影した画像や動画の管理が結構大変です。例えば観覧車であれば、目視の点検用に数百枚の写真や動画を撮影して、ゴンドラの番号ごとにデータを振り分けたりしながら、どの写真がどの場所を撮影したものかを整理していく必要があります。撮影点数も多くなるのでデータ量が膨大になり、過去データの保存も課題になります」

それらの課題を解消するための次のステップとして、サノヤス・ライドでは、3D点群データを活用した点検作業を視野に入れている。同社では実証実験として、DJI Phantom 4 RTK、およびDJI Matrice 300 RTKと、マッピングソフトであるDJI Terraで生成した3D点群データでの点検作業を行った。その手応えは十分にあったようだ。

 

Zenmuse P1を搭載したDJI Matrice 300 RTKでの実証実験の様子。4500万画素での撮影が可能なため、撮影枚数の削減ができ、飛行時間の短縮にもつながった。

 

「以前は画像をアナログ的に管理していたため、あとで見返す際にデータを探して該当する個所を確認するまでに手間と時間がかかっていました。3D点群データでの点検作業は、点群上で見たいところを選べばすぐに高解像度の画像で確認できるため、手間を大幅に省くことができました。この部分だけでも大きなメリットがあると思います」

また、以前の点検結果との比較を行いたい場合、従来の方法では同じ位置から撮影して比較することが難しかったが、3D点群データを生成すればそれも可能になる点にも注目している。RTKの高精度な測位性能にも期待しているそうだ。

実証実験ではDJI Terraを使った点群データでの点検作業も行った。従来の作業では画像をファイルごとに管理していたが、DJI Terraでは一元管理できるので、点検作業の手間を大幅に削減できた。

 

点検作業へのドローン導入を行った経験を踏まえ、この先の業界の変化について伺ってみた。

「ドローンに限らず、点検業務においてもさまざまなICTの導入が進んでいくはずです。熟練工不足や働き方改革の推進を考えると、『効率化』や『自動化』が今後の重要なキーワードになると思います。それを実現していくためにはICT技術の導入は不可欠で、私たちにとってはドローンがその第一歩でした。企業として生き残っていくためにも、積極的にドローン導入を推し進めていく必要があるのではないでしょうか」