必要なのは一歩抜け出す勇気

完成写真の空撮から始めて短期間でi-Constructionを実現

By DJI Enterprise DJI Enterprise
4月 1, 2021

総合建設業として公共事業をメインに、土木工事の施工管理、測量、さまざまな建設工事を行う伊藤工務店。以前から工事の完成写真を空撮していましたが、その撮影のために導入したドローンが、国土交通省が提唱するi-Constructionへの架け橋となっていました。

最初のステップは工事の完成写真の空撮から

伊藤工務店は、岐阜県海津市を拠点に工事を行う総合建設業社。ドローンを導入する以前から、工事が完了したあと、決まって完成写真を空撮していたそうだ。

「ラジコンヘリで空撮する業者に依頼して、毎回撮影していました。岐阜県ではそういう業者は限られていたこともあって、いつも日程の調整などでは苦労していました」

同社の代表取締役、伊藤貴夫さんは、そのように当時を振り返る。恒例となっていた空撮だったが、2016年、依頼していた業者が空撮業務をやめることになり、継続できなくなった。

「ちょうどドローンが話題になってきた頃でした。完成写真の空撮は続けたかったので、試しに一機買ってみたんです」(伊藤氏)

伊藤さんが「新しもの好き」だったこともあり、もともとドローンに興味はあった。購入したのはDJI社のPhantom 4。操作が簡単で、ラジコンヘリの空撮写真よりもきれいに撮影できた。
「買ってきてから考えるタイプなんですよね」と笑うが、結果的に、空撮業者とのスケジュールやコストの調整から解放された社員からも好評だったそうだ。

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新しい技術は積極的に導入していくという伊藤貴夫 代表取締役。変化の多い時代に「既存の枠組みで考えてはいけない」と、人材も建築・土木業界の枠を越えて広く採用をしている。

空撮から入ったドローンがi-Constructionのツールに

空撮が目的でドローンを導入した伊藤工務店だが、その次のステップとして、測量のための撮影、3D点群データ作成へとICT化を進めてきた。同社の井口泰行さんは、空撮から測量へのステップアップの背景には、国土交通省が提唱するi-Constructionへの対応が目標としてあったと語る。

「当社が受注している工事は、ほとんどが公共事業で、国土交通省からの業務も多く請け負っています。そのため、発注者がi-Constructionを推進しており、当然ながら、それに対応していく必要がありました」(井口)

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社内のi-Construction対応を進めてきた井口泰行さん(左)と酒匂智史さん。
現在Mavic 2 Proでの作業がメインだが、今後はPhantom 4 RTKの導入を検討している。

ドローンに限らず、さまざまなツールを用いてICT化を促進し、生産性の向上を目指すi-Constructionは、国土交通省が建築・土木業界で提唱する取り組みだ。伊藤工務店でもそれに合わせた納品を行うため、点群データ作成などは外注していた。そこでもやはりコストの問題は発生する。すでにドローンで撮影するスキルを持っている社員もいる状況で、次のステップに進もうと自社で行う決断をしたという。

「2019年度にはICT化というキーワードの元、ドローンで測量を実施し、i-Constructionの基準に則した形で初めて納品まで行いました」と語る酒匂智史さんは、井口さんと共に同社の中心となってi-Constructionを推進している。

「国土交通省が整備しているi-Constructionの基準に沿って機材を見直し、必要なものをそろえていきました。当社には3Dレーザースキャナーもあります。これも社長の『買ってみよう』のひと言で導入したものですが、現場に応じてドローンとの使い分けをしています。ただ、作業効率の点ではドローンのほうが圧倒的に高いので、飛行可能な現場ではドローンを優先的に使っています」(酒匂)
 伊藤工務店では、女性もドローンを飛ばしている。安部怜七さんは、測量の撮影なども担当しており、パイロットとして活躍している。初めて操作した機体はPhantom 4だったが、尻込みすることなく飛ばせたそうだ。
「もともとは施工管理を行う技術者だったので、ドローンを飛ばすことになるとはまったく考えていませんでした。いざやってみると意外に簡単で、飛ばしたときも怖いとは思わなかったです。初めて飛ばした現場が河川だったので、フライトの条件が良かったんだと思います」(安部)

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ドローンには業務で初めて触れたという安部怜七さん。現在では、伊藤工務店を代表するパイロットのひとりとして、測量の撮影などで活躍している。

設備投資をしなければICT化は進められない

今は、国土交通省が関わる業務ではi-Construction対応がベースとなってきている。しかし一方で、地方自治体や民間企業からの発注では、ドローンをはじめとするICT導入についてはあまり進んでいないのが現状で、そこにはギャップもあると、伊藤さんは説明する。

「i-Construction対応については、片方だけが先行しても成立しないので、発注者と受注者の両方が理解していくしかありません。場合によっては、われわれ工事業者が先導して、発注者側の理解を促していく必要もあると思います。ただいずれにしても、i-Constructionには、業界の高齢化や人員不足といった課題解決という目的もあり、今後、さらに推進されていくことは間違いないですね」(伊藤)

建築・土木業界全体にはICT導入の気運は高まっているものの、実際に導入するとなるとコストや手間はかかる。それを避けて、空撮や測量の専門業者に外注するという選択肢もある。「せっかくドローンという優れたツールがあるのに、それを使わないのはもったいないように思います。撮影から測量、点群データ作成など、外注して任せる方法も確かに手軽なのですが、日程調整やコストなど、すべての作業に調整が必要になります。また、ちょっとしたデータの不備や修正があった場合、また外注業者に戻して時間とお金をかけて直してもらったりと、タイムラグも無視できません」(伊藤)

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以前は外注していた点群データの制作等の処理も、社内の環境を整えて自分たちで行うようになった。コスト削減に加え、トータルでの作業効率も向上した。

設備投資の一環としてドローンを捉えるべきだというのは、井口さんの意見だ。

「測量となると、機体だけでなくソフトなどもそろえる必要があり、確かに高価になります。しかし、これは設備投資です。すぐに見通しが立つものではないかもしれませんが、設備投資をしないことには前に進めません。そこでICT導入を実現できるかどうかは、新しい技術を取り入れていく経営方針があるかないか、というところによると思います。当社の場合は、トップが『とりあえず買ってみよう』と先に導入してしまうので、社員は使わざるを得ないのですが(笑)。でも、それくらい思い切ったことをやっていかないと、一歩抜け出すことはできないと思います」(井口)

伊藤工務店では、その結果として、ドローンの操縦やデータ解析作業などで女性や若い人材が活躍している。

「悩んでいるだけではなく、まずは導入してみることが大事だと思います。やってみないとメリットもデメリットもわかりません。そこからがスタートですね」(伊藤)

現在は、さらに次のステップとして、CIM※導入に向けた準備を進めているという伊藤工務店。手軽な空撮に始まったICT導入が、経験を重ねながら、少しずつ着実に進められている。

※Construction Information Modeling/Management
ICTを活用して、3D モデル等で計画、調査、設計、施工、管理の情報を共有し、管理するシステムの構築。

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Tags: 土木・測量

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