計測・測量業務で注目を集めるドローン。従来の地上からの撮影手法に比べ、ドローンを使う事で格段に効率が向上し様々な業務への応用が可能になった。
今回は、業界でもいち早くドローンを導入し、軍艦島や広島県の豪雨災害の調査でも活用している株式会社計測リサーチコンサルタント(以下、計測リサーチコンサルタント)のクリエイティブ事業部に、Phantom 4 RTK が変える計測業務の未来についてインタビュー形式でお話しを伺った。
2014 年頃からドローンを計測業務に使用しております。ちょうど5 年ほど前に長崎大学と共同で、初めて端島( はしま 通称: 軍艦島) の遺構調査をドローンを使用して行いました。ドローンにより構造物を複数の方向から撮影し、SfM(Structure from Motion) を活用することで、構造物の3 次元モデルを簡単に作成できるという事が分かり、ドローンを本格導入いたしました。現在では、レーザ測量用のMatrice 600 を含め、3 機のドローンを運用しています。
現在3 機のドローンを運用。2018 年秋にPhantom 4 RTK を導入。
やはり撮影効率が圧倒的に向上しました。例えば端島の調査はドローンを活用する事で撮影が2日程度で終了しました。従来ですと、地上から望遠カメラ、脚立などを使って撮影しますが、構造物の側面からしか撮影できず、真俯瞰の撮影は不可能です。
また場所によっては海からボートで撮影する必要がありますが、端島には10m 以上の高さの防波堤もあり、見上げるような角度でしか撮影できません。解像度もバラバラになりますので地上からの計測ですと限界があります。
しかし、ドローンではそのような制約が一切ありません。専用アプリでオーバーラップ率も自由に設定できますので、計測現場では非常に有効だと思います。端島のような現場ではドローンがなければ、そもそも調査自体が出来なかったのではないかと思います。
今年度実施した業務で特に印象に残っているのが、2018 年7 月に発生した西日本豪雨の災害調査になります。災害査定資料の作成にあたり、広島県では平面図の作成をオルソ画像で代用可能となったため、弊社としても積極的にドローンを現場に投入して、数ヶ月で6平方キロという広大なエリアを測量しました。
従来のドローンは、多くの標定点を設置する必要があります。今回は延べ3km の範囲で被災した河川の調査を行いましたが、従来の手法ですと膨大な数の標定点の設置が必要です。標定点の設置と計測だけで1週間はかかったと思います。
しかしPhantom 4 RTK では、標定点の設置を削減しても一定の精度が得られますので、業務効率が格段に向上しました。実際に今回の現場では、Phantom 4 RTK を使う事でわずか半日、6フライトで撮影を完了しました。
延べ3km の測量をPhantom 4 RTK を活用する事で撮影を半日で終える事が出来た。
撮影した写真は、PhotoScan、ContextCaptureなどのソフトで処理し、解析に活用しました。
災害調査では迅速さが求められます。従来の手法ではとても時間的余裕がありませんでしたが、Phantom 4 RTK はそのような現場でも非常に頼れるツールであると考えています。
我々が行う調査、計測業務は山間部の飛行が多くなります。樹木などの障害物も必然的に多くなりますが、Phantom 4 RTK には衝突回避センサーが標準装備されています。従来の大型機に比べてより安全に業務が遂行できると考えています。
また山間部の崩落現場で、地上レーザで計測したデータとPhantom 4 RTK で計測したデータを比較しましたが、誤差は2cm 以下でかなり正確なデータを計測できていることがわかりました。Phantom 4 RTK が持っている位置情報も正確で、標定点の数も大幅に少なくなったため画像処理の時間も削減され、業務効率化につながったと思います。
現在、ドローンを操縦可能な社員は2 名おりますが、ドローンを使った計測業務は各都道府県の提携パイロットが実施しているのが実情です。しかしPhantom 4 RTK を使ってみて、従来我々が使用していた大型機に比べて、操縦が非常に容易で安定性も格段に向上していると感じました。そのため現在社屋に屋外操縦練習場を整備して、パイロットの数を増やしていきたいと考えております。
また、過去5年間の運用を通じてドローンの計測業務における有効性は感じていますので、ダムや、橋梁、プラントなどの点検を行うシステムを自社で作成し、業務の効率化を行なっていきたいと考えています。
Phantom 4 RTK は機体の安定性が非常に高く、今後は室内練習場を設置し、ドローンの操縦者を増員する予定である。