固定翼とマルチローター:航空測量にはどのドローンが最適?

航空測量用ドローンを選ぶ時に知っておくべきこと

By DJI Enterprise DJI Enterprise
12月 14, 2021

従来のデータ収集法に代わってドローンを使うという決断は大きな第一歩となり、先進的な航空測量のプロが多く採用しています。

航空測量は新しい標準として、今、市場に出回っているハードウェアやペイロードと同じくらい幅広く応用されています。従来の方法と比べて、上方からの測量においてデータ収集が迅速になり、より精密なデータを収集することができるため、安全性と費用効率性がともに向上します。

建設プロジェクト計画、事故現場の復元、森林や農地、その他の天然資源の管理を行う際に、ドローンデータを使ってオルソモザイク地図や3Dモデルや点群データの詳細を作成することができます。

P4 RTK scanning GIF

このようにして得られたデータセットにより、的確かつ迅速な意思決定が行えるようになります。しかし、導入する前にいくつか考えなければならないことがあります。まず、実行する作業にどのドローンを選ぶべきか決めなければなりません。一般的に、それは固定翼ドローンかマルチローターのどちらを選ぶべきかという選択になります

ここでは、それぞれのメリットとデメリットを取り上げ、お使いになる測量用途に最適なドローンがどれになるかを判断するお手伝いをします。 

固定翼ドローンでの測量

動作範囲

固定翼ドローンは、これまでずっと有人飛行や衛星写真に頼ってデータを収集してきた測量のプロにとって、直感的な選択肢になります。

なぜなら、これは常に手元の作業規模に関わってくるからです。例えば、石油・ガスや農業分野のプロの方は、固定翼を選択するのが良いかもしれません。動作範囲、飛行速度、飛行時間といった有人の場合に関わってくる項目で有益な特性を得られるからです。

固定翼ドローンは、一般的な飛行機のように、翼で揚力を発生させます。従って、マルチロータードローンのような大量のエネルギーを消耗せず、結果として効率的に飛び続けることができます。

アートボード 2@2x

そのため、固定翼ドローンは、パイプラインの点検や農業測量のような広大なエリアを網羅する作業によく選ばれています。

強風での安定性

他にも、状況的に固定翼ドローンを使うとメリットが出る場合があります。固定翼は、マルチローターよりも空気力学を活かしているので、初心者にとって強風の中でも扱いやすい傾向があります。また、その構造から、動力を失って落下する場合に、破損のリスクが低い着陸ができるようになっています。しかし、この機能ゆえのデメリットがあることも後述します。

飛行時間

固定翼ドローンが実現できる飛行時間は最大のメリットです。ほとんどのモデルは、1つのバッテリーで1時間以上飛ぶことができます。この性能のおかげで作業時間を減らすことができるため、多くの測量業務は1回の作業で終わらせることができます。

Fixed Wing Takeoff

高価 !

一方で、翼長ゆえの短所があります。固定翼ドローンは、マルチローターよりもかなり高価になりがちです。また、サイズが大きくなってしまうため、輸送がより難しく、現場での準備作業に時間がかかる傾向があります。

低い操作性 !

固定翼ドローンが広いエリアをカバーするよう設計されていることが最大の弱点になってしまうこともあります。速度と距離を取ると、反対に操作性が犠牲になります。

ホバリングできない !

固定翼ドローンは、定位置にホバリングするといったことができないため、その分汎用性が減ります。さらに、マルチローターが持つ融通性や障害物検知能力がないために、複雑な環境や狭い場所での測量は危険になる可能性があります。

手間のかかる離着陸 !

離着陸は、固定翼ドローンの測量作業の中でも恐らく最も複雑なものになります。離着陸の難しい部分をこなすには、操縦士の代わりとして、相当なレベルのスキルとトレーニングと勉強が必要になってきます。離陸では、ドローンの大きさによって、滑走路か何らかの始走器、あるいは手を使うことが求められます。着陸でもまた、パラシュートやネット、あるいは(できるだけ)衝撃の少ない胴体着陸が求められます。

固定翼ドローンで測量するメリットとデメリット

fixed-wing

マルチローターでの測量

マルチロータードローンは、見晴らしの良い場所から素早く情報を集める場合に完璧なツールです。

従来の測量方法に比べて、より短時間で、より柔軟に、計画要件を減らし、スタッフへのリスクも少なくしながら、同等のデータを得ることができます。

マルチロータードローンが、建設や農業だけでなく、それ以外にも多くの分野で測量ツールとして普及してきた理由はいくつかあります。

使いやすさと自動制御

まずは使いやすさです。自律飛行とミッション計画ソフトウェアの進化により、複雑なマッピング作業も簡単にセットアップして始めることができます。操縦者は、やはり訓練が必要ですが、今は実作業をする人ではなく、監視する役割になります。

自動操作がこのようなレベルになったおかげで、より高い精度が保証され、人為的ミスが減るという別のメリットもあります。ボタンを押すだけで、高精度の飛行計画を実行し、繰り返すことができます。これはまさに、地図や3Dモデルを経時的に作成する際に誰もが望むものです。

Ease of Use and Automation

操作性と汎用性

測量用マルチローターが人気になってきた2つ目の理由は、操作性にあります。DJI Matriceのようなプラットフォームは、高度を調整したり、定位置でホバリングしたり、あるいは空中で旋回したりすることが簡単にできます。

その意味で、マルチローターは、どのような作業規模や複雑さでも対応する汎用性の高い空撮ツールになります。さらに、マルチローターには、DJI Matrice 300のADS-Bレシーバーや障害物回避技術といった安全性を高める機能が内蔵されているものが多くあります。

必要に応じて交換可能なペイロード

3つ目は、必要に応じてペイロードを交換可能なことです。前述のDJI Matrice 300 RTKは、フルサイズ航空測量用カメラのZenmuse P1、LiDARソリューションのZenmuse L1、高性能なイメージングサーマルペイロードのZenmuse H20シリーズ、Zenmuse XT S、Zenmuse XT2、Zenmuse Z30、さらに、DJIペイロードSDK使用時のマルチスペクトルセンサーのようなサードパーティ製ペイロードとも互換性があります。

適応性の高いマルチローターを使えば、必要な時に必要な測量ソリューションを構築することができます。

携帯性

最後に、マルチロータードローンが測量のプロに提供するメリットは、携帯性です。マルチロータードローンは、荷物に入れて持ち運びが簡単にできるだけでなく、準備して作業を始めるのも簡単です。こうしたメリットの全てが、現場での時間を節約し、一つの場所から別の場所へ機材を移す作業を楽にします。

飛行時間が短い !

マルチローターの最大の弱点は、飛行時間です。航空測量において、飛行時間が短くなるということは、一回の飛行で取れるデータ量が減ってしまうことを意味します。それはまた、着陸させてバッテリーを交換するという中断が入ることを意味します。

時間的制約のある作業で、これは好ましくありません。しかし、実際には、そのような中断は最小限に抑えられています。P4 RTKあるいはM300 RTKに繋げておけば、作業再開機能で作業を中断した場所を記憶し、新たなバッテリーと交換した後、自動的に元のところから作業を再開します。

マルチロータードローンを使った測量のメリットとデメリット

multirotor

妥協例:ハイブリッド型VTOLドローン

固定翼とマルチローターには、測量用途によってはそれぞれの弱点があることを考慮し、標準クワッドコプターのように離着陸し、かつ固定翼のように飛ぶハイブリッド型ドローン(VTOLドローン:Vertical take-off and landing drones)を開発したメーカーもあります。

理論的に言えば、このようなソリューションは、両方の一番いいところを提供します。スピード、範囲、簡素化された離着陸の操作性を維持し、かつ大規模なエリアの地図を簡単に作成することができます。そうは言っても、このような機能は高価になってしまう一方で、マルチローターでできるような多くのマッピングタスクを必ずしも保証しないことがあります。

どのような測量とマッピング用途がマルチローターに理想的?

一般的に、マルチローターと固定翼ドローンのどちらで測量するのが良いかを決定する鍵は、手元の作業規模にあります。

マルチローターは、マッピング・モデリングする場所が10ヘクタールぐらいまでの規模に対して適応性があり、費用対効果も高いソリューションになります。建設、鉱業、石油・ガス、農業、さらにそれ以外の様々なプロジェクトにおいても、収集できる空からの情報の精度、深度、スピードで圧倒的なメリットが出ます。

固定翼またはハイブリッドタイプは、より広大な規模で作業をする場合に適しているかもしれません。

ただし、業務全体の時間より費用を優先するならば、大規模な範囲であっても、マルチローターが現実的な選択肢になります。

業務規模は測量ドローンを選ぶ上で中心となる点ですが、他にも、収集したいデータの深度も重要な点となります。

それを念頭に、ドローンを選ぶ前に考慮すべきいくつかの疑問があります。第一に、地図あるいはモデルはどこまでリアルなものにしたいかという点です。別の言い方をすれば、GSD、つまり地上画素寸法(地図上で連続する二つのピクセルの中心間距離)をどのように設定したいか、です。

この質問に対する答えは、カメラの品質と、データを収集する飛行高度(従ってスピードも)の観点から、選択を導く必要があります。その時に、全てのペイロードが同じように作られているわけではないことに注意してください。

測量において、固定翼とマルチローターはどちらが優秀でしょうか?

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DJIの測量ソリューション

測量ツールを次のレベルまで引き上げたいと思っているなら、いくつかのマルチロータードローンの中から選択することができます。

Phantom 4 Pro

P4 Pro Render
高解像度な空撮用20MPセンサーを搭載したDJIの従来型機体。このドローンは空撮を始めるには最適ですが、DJIの測量用ドローンの中で最もパワフルな機体というわけではありません。RTKモジュールが内蔵されていないので、地上基準点(GCP)を設定するのに余分な時間が必要になります。

Phantom 4 RTK

P4 RTK Rendercmレベルの精度を実現する統合RTKモジュールを搭載したプロフェッショナルなマッピングソリューション。ドローン測量を志す方にお勧めのスタータードローンです。

Matrice 300 RTK

M300 RTK Render交換可能なペイロードと55分の飛行時間で堅牢性と適応性の高いプラットフォーム上に構築された業務用マッピングソリューション。

DJIのペイロードオプション

Zenmuse L1: DJI初の航空測量向けLiDARソリューション

L1 Render

Zenmuse L1は、3軸ジンバルスタビライザーにLivox Lidarモジュール、高精度IMU、1インチCMOSカメラが統合されています。

このLiDARペイロードは、垂直精度5 cm、水平精度10 cmの正確性で、3リターン、点数240,000点/秒、測定距離450 mをサポートし、保護等級IP54の保護フレームに収められています。

DJI L1は、Matrice 300 RTKやDJI Terraと組み合わせることで、リアルタイムに3Dデータを収集し、複雑な構造物の詳細を効率的に捉え、高精度な再構築モデルを提供するための完全なソリューションとなります。

Zenmuse P1: 高度な航空写真測量

P1 Render

Zenmuse P1は、45MPのフルフレームセンサーと交換可能な固定焦点レンズを、3軸ジンバルに搭載しています。このペイロードは、GCPなしで垂直精度5cm、水平精度3cmを誇ります。M300 RTKにP1を搭載することで、測量者は1回のフライトで3 km2の範囲をカバーすることができます。 

航空写真測量用に設計されたDJI P1は、効率と精度をまったく新しいレベルに引き上げます。

サードパーティペイロード:柔軟な開発者向けエコシステム

3rd party payload

DJIのオープンなPSDKをベースに、エコシステムパートナーが特定のプロジェクト要件を満たす様々なサードパーティ製ペイロードを開発しています。M300 RTKと互換性のあるサードパーティ製ペイロードの詳細はこちらからご覧いただけます。 

測量業務に合った正しいドローンを選択するために

Dドローンは、測量ツールの中でも極めて重要な部分になっています。精度の高い空撮データがこれまで以上に入手しやすくなり、市場には膨大な数の選択肢があります。 

最終的には、予算、作業の規模、撮影したいディテールのレベルに応じて、適切なドローンを選択することになります。  

マルチローターは、携帯性、使いやすさ、航続距離のバランスが取れており、マッピングやモデリングの多くの用途に適しています。また、DJI Matrice 300 RTKのように、飛行時間とペイロードの統合という点でも、マルチローターの能力は高まっています。 

ドローンがお客様の測量ビジネスにどのように役立つかについては、購入ガイドをご覧ください。

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Tags: 土木・測量

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