愛知県豊橋市に本社を置くCESSは、地すべりや地盤の調査、道路点検や施設点検、関連技術の支援等を行う会社である。近年多発する土砂災害は家屋、道路、農作物等に甚大な影響を及ぼしており、同社は災害リスクから社会を守るための技術やサービスを提供している。今回は同社が実施した土砂災害における現場に同行し、調査についてお話を伺った。
土砂災害調査の現状
現在、調査の現場では土石流、地滑り、がけ崩れ等に対し、いずれも目視による調査、現地踏査が初動調査としては一般的だ。理由は、現場への立ち入りがそもそも困難な場合が多く、二次災害発生の可能性等を考慮し、安全を確保しながら徒歩による調査をするためで、被災範囲の確定に時間がかかるのが現状である。そのため、いち早く現場の状況を把握し、復旧作業に取り組むためには、迅速な調査と被害状況の全容把握することが課題となっている。
多くの現場は、二次災害の可能性から安全を確保しながら、徒歩で現場調査にあたっている。
今回、林道が地滑りにより不通となり、早急な復旧が必要となった。現場の状況によっては、通常の調査には多大な労力と時間がかかってしまう。そこで、効率的かつ正確な調査を実現するために、高精度のLiDARであるZenmuse L2を用いた調査を実施した。Zenmuse L2の導入により、従来の方法では困難であった地形も、詳細な状況把握が可能となったという。また、これにより復旧作業のスピードも大幅に向上し、復旧の早期完了が期待されている。
Zenmuse L2を使い、一連の作業が1時間程度で可能に
従来の調査方法では、大勢の人員で調査するところを、Zenmuse L2を使用し効率化が図れた。
株式会社CESSの中村氏は、今回の調査について、次のように語る。「今回の現場は、25haの調査範囲になります。従来の調査では、25haの調査範囲に3~4人で作業して、3~4日かかる状況です。Zenmuse L2を使うことによって準備から可視化まで(点群データの書き出し・フィルタリング処理等を含む)、約1時間で作業ができ、目視調査に比べて、格段に効率化が図れました」。
危険地帯に立ち入らず、安全性を保ちながら、情報を収集
従来の調査は、徒歩のため多くの時間と危険が伴う(調査のため、急斜面をのぼる中村氏/上記中央)
従来の調査では、危険地帯に入り作業することになり、二次被害に遭う可能性が高くなる。その点、Zenmuse L2を使えば、危険地帯に入らずに情報を収集し、非常に安全性が保たれた調査が可能だ。また、データの可視化で、範囲の確認を行い、現場での対策検討が容易にできるようになり、より効率的に業務が遂行できた。 中村氏は、「今後Zenmuse L2を使って災害現場での安全性を高めた調査を進めていきたいと考えています」。と話す。
Zenmuse L2を使い、現場を可視化し危険地帯に立ち入らいないことで、安全性を保つ調査を実施。
現場の計測がわずか8分で撮影が完了
検証をサポートした株式会社ARMADUSの吉田氏は、以下のように述べている。「従来機種のL1では、山岳地帯で概ね60mで計測を行なっておりました。しかし、Zenmuse L2ではビーム幅が大幅に狭くなり、リターン数も増えたため、今回の現場では従来に比べ倍の高度120mでも十分なデータの計測が出来ました」。
ビーム幅が大幅に狭くなり、リターン数も増えたため、高度を上げて計測が出来ました。(吉田氏)
Zenmuse L2は5リターン対応。高密度植生エリアでは、葉の下まで透過し、より多くのグラウンドポイントを
捉える。
今回の土砂災害調査では、実際の撮影はわずか8分で完了。Zenmuse L2を使い、準備からデータの書き出し、フィルタリング処理を含めて約1時間で作業ができたため、目視調査に比べて、格段の効率化が図れたことになる。
フィルタリング含めて、約1時間ほどで作業が完了。各段に効率化が図れた。
今回の検証を経て、ドローンの有効性を実感
また、吉田氏は、「災害調査は、初動調査、詳細調査、設計、施工の4段階に分かれるが、今回Zenmuse L2で計測したデータの精度が非常に高いため、初動調査のみならず、土量の算出で必要な詳細調査の一部まで、作業効率の飛躍的な向上が期待できるのではないか」と述べている。