LiDARを活用して古代マヤ文明を発見する

Zenmuse L2がどのように前植民地時代の歴史の再発見をサポートしているか

By DJI Enterprise DJI Enterprise
7月 3, 2024

メソアメリカの鬱蒼たるジャングルの中に埋もれた古代マヤ文明は、全盛期には比類のない壮麗さを誇り、文化、知識、神秘的な史跡が複雑なタペストリーを織りなしています。謎に包まれたマヤ文明の歴史は数千年に渡っており、中央アメリカの広大な範囲に影響を及ぼした文明を網羅する、魅力的なストーリーを物語っています。

現在も、古代マヤの歴史は祖先から受け継がれています。 マヤの大半の都市は長い年月の間に失われ、文明を支えたインフラは、長年にわたって過酷なジャングルの中に埋もれています。 マヤ文明の一部は発見されましたが、多くはいまだに発見されていません。

 

DJI Shot of La Danta

エル・ミラドール - 古代マヤ遺跡

 

エル・ミラドール - 歴史が埋もれるジャングル

北グアテマラと南メキシコの間に広がる鬱蒼とした熱帯雨林、ミラドール・カラクムル カルスト盆地にひっそりと、古代マヤの入植地であるエル・ミラドールがあります。紀元前800年に遡るこのマヤ遺跡は、1930年当時の調査によって初めて登録され、その後、1960年代から2000年代初頭に至るまで、大勢の考古学者が調査を行いました。その主な建造物であるラ・ダンタは、マヤで最も有名な建造物であり、世界最大の体積を誇るピラミッドです。 

160万エーカー(約648千ヘクタール)に及ぶミラドール盆地には、マヤ文明の豊かな歴史が隠されています。考古学者たちはすでに、グアテマラ側だけで50以上のマヤの建造物を特定しています。しかし、かつてこの地域を発祥とした文明に関する貴重な情報が埋もれている可能性のある、数百エーカーの土地は依然として残されたままです。 

広大な土地は、計り知れない歴史的価値をもつ宝物が埋もれている可能性を秘めていますが、地上からの研究には物流上の課題が生じています。ドローン技術は密生した樹冠の航行に長けているため、研究者は調査範囲を拡大し、数百エーカーの未踏の地に隠された秘密を解き明かすことができます。こうしたドローンベースのソリューションのコスト効率とアクセス性は、パラダイムシフトと言うべきものであり、ミラドール盆地の考古学的な驚異を体系的に探索するための新たな扉を開くものです。 

ここで、DELDesarrollo Evaluaci ó n y Logí stica)社が登場します。グアテマラを拠点とするDEL社は、ドローンなどの革新的なソリューションを統合し、不動産、エネルギー、農業の各企業に正確な情報を迅速に提供する総合企業です。グアテマラ政府は、有人航空機とLiDARセンサーによるエル・ミラドールのマッピングに失敗し、機材とデータを失いました。そこで、DEL社に連絡を取り、何世紀にもわたって埋もれている知られざる秘密を明らかにするために、ドローン技術の機能をテストしました。

Zenmuse L2などの航空機用LiDARソリューションは、特にこうした探索プロジェクトに役立ちます。LiDARシステムを搭載した有人航空機よりも大幅に低コストで入手可能な、Zenmuse L2を搭載したMatrice 350 RTKなどのソリューションは、密生した森林の樹冠を透過して十分な地表データを収集し、ありふれた風景に隠された古代遺跡の可能性を特定できます。

Dr. Richard Hansen pointing out Mirador Basin

Richard Hansen博士によるエル・ミラドール盆地についての説明

こうした技術は、ストーリーを伝えることを可能にし、大きな違いをもたらします。 私たちがこれまでに見たことのない人類の1ページが明らかになります。

- Richard Hansen博士

課題への対応

遠隔地でのLiDARデータの収集には、オンサイトのインターネット接続がなく、衛星画像が限定されるなどの課題があります。DJIチームは、Drone Plus Dallas社の協力を得て、遠征準備のためにグアテマラシティでDEL社と協議しました。ここでチームは、ミッション計画の準備やファームウェアの更新に加えて、物流の課題に取り組みました。

 

5 M350 RTKs with Zenmuse L2

グアテマラシティでの飛行前準備

 

チームは、2日間の遠征中に、1日あたり25 km2のマッピングを目標としました。5台の Matrice 350 RTKを使用し、それぞれにZenmuse L2を搭載してこの目標を達成しました。各ドローンのプロットを複数のセクションに分割し、KML飛行ミッションをコントローラーにインポートしました。各ドローンは、1日あたり5 km2以上をカバーするように設定され、飛行高度は160 mに設定されて、1回の飛行あたりのスキャンエリアを最大化しました。 

主な目的は、エル・ミラドールの厚い樹冠層に覆われた地面のデジタル地形モデルを生成することでした。このモデルは、ジャングルに隠されている可能性のあるマヤの建造物を特定するのに役立ちます。このモデルを使用して、考古学者はこのエリアのより詳細なスキャンと調査を行い、マヤ遺跡の存在を確認できます。

遠征 - エル・ミラドールのマッピング

Team departing for El mirador

 エル・ミラドールへ出発するチーム

キャンプに到着すると、チームはエル・ミラドールピラミッドの頂上に向かい、飛行の設定を開始しました。 チームは、DJI D-RTK 2基地局を使用し、ピラミッドの頂上にある調査マーカーの上に取り付けました。

DJI DRTK-2 Station

DJI DRTK-2基地局は、接続性を確保するために高い位置に設置

 

草木が密生した場所でのLiDARデータの収集には、ドローンとの接続を維持するという大きな課題があります。接続性は、次の2つの理由により重要です。 

  1. グローバル修正:L2でデータを収集する場合、RTK基地局に(直接またはNTRIP経由で)接続して飛行するか、PPKでデータを処理することが重要です。エル・ミラドールは極めて遠方のため、近くの基地局から携帯電話のNTRIPに接続したり、PPKデータをダウンロードしたりすることはできません。つまり、RTKワークフローまたはPPKワークフローのいずれかを使用して、飛行中もドローンや衛星に接続したままにしておく必要があります。 
  1. ミッションコントロールDJI Pilot 2アプリには、コントローラー接続なしでドローンが飛行ミッションを実行できるようにする設定がありますが、動画ダウンリンクを一定に維持することで安心感が得られます。RTKを使用すると、コントローラーから修正信号が送信されるため、ダウンタイムによって修正エラーが発生する可能性があります。 

こうしたミッションでマッピングする場合は、接続を確保するために、パイロットを高い位置に配備することをお勧めします。このミッションでは、パイロットを頂上に配備し、ピラミッドの基部からドローンを離陸させました。この問題を解決するもう1つの方法は、マストでドローンと衛星の接続を維持するために、樹冠を切断して穴を開けることです。ただし、この方法は森林を破壊することになり、時間もかかります。

                                          Mayan Case Study 6 Mayan cASE sTUDY 7

パイロットがピラミッドの頂上からミッションの進捗状況を追跡できる離陸スポット

 

チームは遠征中に40回の飛行を実施し、後工程で処理と分析を行う必要がある、700 GBを上回るLiDARデータを収集しました。DJI Terraの簡単な統合機能とLiDAR処理機能により、チームは1日でこのデータを処理し、LASファイル形式のDTMDEMの両方を100%密度で生成することができました。

 

LiDARと古代史の遭遇

Researcher reviewing data

Zenmuse L2 Zenmuse L2から取得したデータの検討

 

Zenmuse L2によって得られた結果は、DEL社と考古学者の期待を上回るものでした。5つのリターンと24万の点により、植生透過性が大幅に改善され、160 mの高度で19点/m2のデジタルモデルのグラウンドポイント密度を得ることができました。これらの結果は、LiDARを搭載した有人航空機やZenmuse L1による、類似分野での従来のミッションと比較して、大幅な改善を示しています。 

 

結果

Zenmuse L2

有人機 LiDAR

Zenmuse L1 

高度

160m

550m

160m

点密度

366 points/m2

48.39

234points/m2

グラウンドポイント密度

19 Grtn/m2

2.18 Grtn/m2

9 Grtn/m2

出典: Zenmuse L2ホワイトペーパー

 

データの処理後、DJI Terraの点群分類機能により、調査チームは樹冠を削除し、地表の点群データにフォーカスできました。これらのモデルから、未発見の入植地に関する知見に満ちた情報を得て、今後の調査活動を計画し、優先順位を付けることができます。

 

DEM results from Zenmuse L2

Zenmuse L2からのDEM結果

 

地上での調査は未だ完了していませんが、ドローンが生成した点群モデルを使用すると、ジャングルの地面を偵察し、数マイル離れた場所から調査を続行できます。これにより、エル・ミラドール盆地に隠された秘密の解明に一歩近づき、古代マヤ文明の興味深い歴史に触れることができます。

私たちが行っていることはすべて、歴史の一部となるでしょう。このようなプロジェクトを支援するビジョンを持ったDJIに感謝します。

- Richard Hansen博士

ドローンと考古学の未来

ドローン技術は、考古学的な研究と保護活動に欠かせないツールであることが実証されています。有人航空機と地上スキャナーという従来の方法と比較して、ドローンは効率と精度の理想的なバランスを実現します。

考古学的な発見以外にも、ドローンによって史跡や遺産の研究と保護を支援するさまざまな方法があります。

  1. 3Dマッピングと再構築:3Dマッピング技術の向上により、考古学的な現場の再構築をより詳細かつ正確に行うことができます。これは、文化遺産の保護や、人々が遠隔地から名所旧跡を探訪するバーチャル観光に役立ちます。
  2. 教育支援:ドローンを使用することで、人々が考古学をより理解しやすくなります。高品質の画像と双方向モデルにより、ドローンは教室や展示会において、教育目的で古代文明に命を吹き込むことができます。
  3. 環境影響研究:遺跡の発掘を始める前に、ドローンを使用して環境への影響を評価できます。これは、発掘作業が既存のエコシステムに悪影響を及ぼさないことを確認する上で不可欠です。

DJIは、ドローン技術の統合を目指す研究チームの一員として、地域社会を支援し、歴史を保護するためのドローン活用に取り組んでいます。専門的なアドバイスやサポートを希望される場合は、最寄りのDJI正規再販業者または当社までお問い合わせください。

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Tags: 土木・測量, AEC & 測量

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