マギル大学応用リモートセンシング研究室のDJI Terra活用例

マギル大学ARSLがDJI Terraを泥炭地などのエコシステム研究に活用

By DJI Enterprise DJI Enterprise
1月 30, 2025

カナダのモントリオールにあるマギル大学は、カナダの一流大学の1つです。またこの大学には、革新的なリモートセンシング研究で最先端の応用センシング研究所(Applied Remote Sensing Labs:ARSL)があります。Margaret Kalacska博士が率いるこの研究室では、衛星画像、LiDAR技術、マルチスペクトルと熱画像を活用して、水圏生態系、自然災害、インフラの複雑な環境データを分析、解釈しています。ARSLでは、包括的な3DモデルマッピングソフトのDJI Terraを活用して、リモートセンシングデータの収集と処理能力を大幅に強化しています。

マギル大学応用リモートセンシング研究室

ARSLの研究は、LiDAR(光検出と測距)、写真測量法、マルチスペクトル解析など、複数の主要領域に及びます。これらの手法により、高精度の地形マッピング、細部まで鮮明な画像の撮影、さまざまなスペクトルバンドの研究が可能になり、世界各地の自然環境の環境条件と変化を評価することができます。

Margaret Kalacska博士の貢献

Margaret Kalacska博士は、マギル大学地理学科の准教授で、リモートセンシング分野で著名な人物です。彼女は、環境科学のリモートセンシング応用の開発に多大な貢献をしてきました。生態系と環境の課題に取り組む博士の研究は、高度な技術を率先して応用する場としてARSLの設立に重要な役割を果たしてきました。Kalacska博士の専門知識とリーダーシップが、研究室の成功に重要な要素となっています

 

Data Collection with DJI Terra

DJI Terraによるデータを確認するMargaret Kalacska博士と研究員

メールブルー泥炭地(カナダ)の調査

カナダのオンタリオ州東部にある、8,000年前からある湿地帯のメールブルー泥炭地は、世界でも注目度の高い泥炭地の1つです。この泥炭地は生態学的特性と地質学的特性が高く評価されており、カナダ政府と世界の科学コミュニティにとって重要な存在です。また、Fluxnet - カナダ研究ネットワークの重要な要素でもあります。このネットワークでは、森林と泥炭地の生態系における炭素循環に対する気候、および環境への影響を把握することを重視しています。地球上の炭素循環において、メールブルーの重要性は計り知れず、科学界にとって重要な研究分野となっています。

 

mer bleue peatland

メールブルー泥炭地

 

メールブルー泥炭地には独自の生物学的/生態学的ダイナミクスがあるため、生態系が温度、降水量、その他環境要因の変化にどのように反応するかをモニタリングする継続的な研究が必要です。しかし、この環境は湛水しており、水が多いことから、環境科学者に大きな課題となっています。この状況では、従来のデータ収集方法では、信頼性の高い測定値を得ることが困難なことが多く、最先端技術の導入が求められていました。

Margaret Kalacska博士とマギル大学応用リモートセンシング研究室(ARSL)のチームは、課題の克服に最先端のドローン技術を採用することにしました。写真測量とLiDARセンサーを搭載したDJIドローンを使用して、チームはメールブルー泥炭地から広範なデータセットを取得しています。その後、取得したデータをDJI Terraで処理して、詳細な点群、オルソモザイク画像、地形マップに変換します。生成されたマップから、地形の重要な違いが細部まで明らかになり、泥炭地の微地形に関して貴重な洞察が得られました。

 

M350 RTK with Zenmuse P1

DJI M350 RTKにZenmuse P1を搭載してメールブルー泥炭地上空を飛行 

 

研究室ではDJI Terraを使用した取り組みを継続して、3Dモデリング以外にも広がっています。DJI Terraは、泥炭地の地表下の水分布の把握にも、重要な役割を果たしています。これは、二酸化炭素吸収限としての機能に密接に関連する要素です。メールブルー泥炭地の中心部は約7メートルの深さで、水面からの水深が10~50センチメートル変動します。年間の変動が炭素隔離に重要な役割を果たします。これを詳細に分析すると、研究者は炭素隔離、また時として炭素放出における泥炭地の役割について理解を深めて、生態系での重要性を浮き彫りにすることができます。

さらに、ARSLはドイツのハイパースペクトル衛星「EnMAP」と連携して、この独特な生態系の衛星画像を検証しています。DJI Terraで生成した高空間詳細水面高度モデルは、ドローン、空中センサー、衛星により撮影されたハイパースペクトル画像を補正するベースラインマップとして機能します。この連携は、衛星データの精度を確保し、メールブルー泥炭地の生態学的プロセスの理解を深めるうえで、極めて重要です。

DJIのドローン、DJI Terra、国際衛星ミッションとの連携を組み合わせて活用することにより、マギル大学応用リモートセンシング研究室は今後もメールブルー泥炭地の研究を進めていきます。メールブルー泥炭地の研究は、重要な生態系の保全に貢献し、泥炭地環境とその地球上の炭素循環における重要な役割について、理解を深めることに役立っています。

Field data collection

Margaret Kalacska博士とPablo Arroyo-Mora博士。メールブルー泥炭地にて。

コスタリカの火山クレーターのマッピング

多様な景観で知られるコスタリカには、多くの火山があります。中でもポアス火山は、最大で最も活発な火山の1つです。ポアス火山は、首都サンホセから約20マイルの場所にあり、この2世紀に40回、直近では2019年9月に噴火しています。大都市の中心部に近いため、市民の安全と科学研究には、火山の動的なクレーターの継続的なモニタリングが重要です。

 

Poas Volcano

コスタリカのポアス火山

 

ARSLは、最先端のドローン技術を使って重要なデータを収集し、ポアス火山の詳細な調査を実施しました。この調査には主に2つのデータ収集作業があり、それぞれが火山活動モニタリングの異なる側面に対処しています。

まず、DJI Mavic 2 Enterprise Advancedを使って熱画像が撮影されました。このデータは、火山クレーター全体の温度変動の特定を重点としており、火山活動による温度変化と太陽熱などの外部要因による温度変化を区別することができます。温度の差異を理解することは、火山の活動レベルと危険の可能性を高い精度で評価するのに必要不可欠です。

2つ目のデータセットは写真測量法を使用したもので、DJI Terraで処理して、クレーターの高解像度3Dモデルを作成しました。この詳細なモデルにより、火山噴火の前後のごくわずかな変化(センチメートルレベル)まで検出できるようになります。こうした微細な変化のモニタリングは、将来の噴火予測や噴火に伴うリスク軽減に極めて重要です。

コスタリカで最も懸念されていることの1つは、火山噴火に対する緊急時の備えです。2017年にポアス火山は大噴火を起こし、避難が必要となりました。今年初めにも、再度噴火しています。こうした出来事を考慮し、OVSICORI(Observatorio Vulcanológico y Sismológico de Costa Rica:コスタリカ火山地震観測所)とARSLは、DJI Dock 2を使用して継続的なモニタリングとドローンの自動操作の可能性を探ることに関心を抱きました。

OVSICORIは、ポアス火山のモニタリングを概念実証と考えています。成功すれば、データ収集と3Dマッピングの利用を国内の離れた場所にある活火山にも拡張する予定です。DJI Terraで作成した写真測量モデルは、クレーターの、特に崩壊した領域について最新のベースラインデータを提供します。このモデルは、今後のモニタリングで変化を特定する重要な基準として機能し、火山観測の精度と信頼性の向上に役立ちます。

DJI Terraを使ったARSLのポアス火山研究は、火山活動の理解に貢献し、コスタリカの緊急時の備えと市民の安全を向上する上で重要な役割を果たしています。この研究で得られた知見は、ポアス火山の地域内と世界各地のいずれでも、他の火山にモニタリング戦略を知らせる可能性を秘めています。

 

DJI Terra

DJI Terraで生成されたポアス火山の3Dマップ

モルディブにおける森林保全状況モニタリング

インド南西部のインド洋に浮かぶ小さな環礁の国、モルディブ共和国は、ギリシャほどの領域に広がる26の環礁と1,000の珊瑚礁の島で構成されています。これらの島々には、モルディブが誇る深い熱帯雨林があり、熱帯の強烈な日射を遮るのに必要な日陰を提供してくれるため、盛んな観光業に不可欠です。モルディブで最も一般的で生態学的に重要な樹木にモモタマナがあります。残念なことに、モモタマナは、旺盛な食欲で樹木の生命を脅かすドクガ科の毛虫(Euproctis Fraterna)による深刻な脅威に直面しています。

この脅威に対応するため、ARSLはカナダの別の機関と協力して、ソネバ フシ リゾートと連携し、重要な保全プロジェクトに着手しました。プロジェクトでは、モルディブのリゾート島でユネスコ世界生物圏保護区に指定されるクンフナドゥ島で、モモタマナのマッピングに集中して取り組みました。国内最大級のリゾートであるクンフナドゥ島は、モルディブの観光経済に不可欠で、森林保全が最優先課題です。

 

Kunfunadhoo Island

モルディブ、クンフナドゥ島

 

ARSLの主な目標は、毛虫による被害を受けた樹木を迅速に識別するリモート診断ツールを開発することでした。この目標を達成するため、LiDAR技術を使って島全体の詳細な点群データを収集し、収集したデータをDJI Terraで処理して、高い精度で森林樹冠の高解像度3Dモデルを作成しました。

DJI Terraにより生成された3Dマップは、この保全活動に重要な役割を果たしました。マップにより、森林が詳細に可視化され、研究者たちはクンフナドゥ島のモモタマナの位置をそれぞれ正確に把握することができるようになりました。またこの3Dモデルは、各樹木の健全性を比較する基準としても機能し、科学者たちは健康な木と病気の初期兆候を示す木を判別できるようになりました。

森林の健全性についてリアルタイムな洞察が得られることは、DJI Terraを使用する最大の利点の1つです。これらのモデルにより、研究者たちは時間の経過に伴う森林の変化を驚くほど正確にモニタリングできるようになります。現在のデータと過去のベースラインを比較すると、科学者は、害虫による病気の初期兆候となる葉の密度の低下や色の変化など、樹木の健康状態の微妙な変化を見極めることができます。このように早期に検出することは、適時の介入を可能にし、病害が深刻になる前に樹木を保護できる可能性があるため、非常に重要です。

モルディブ経済は、健全で美しい自然環境に大きく依存しているため、このようにリアルタイムで洞察を得られることは極めて貴重です。3Dモデルは、毛虫などの脅威の迅速な特定と長期的な森林管理戦略に役立ちます。3Dモデルを継続的に更新することで、ARSL、害虫駆除対策の効果を追跡し、必要に応じて計画を調整して、森林が確実に島の活力ある生態系の一部として維持することができます。この技術は、クンフナドゥ島のモモタマナの保護だけではなく、美しい自然に依存するモルディブの重要な観光産業の保護にも役立っています。

 

3d map of island島南部の3Dマップ

ARSLとDJI Terra

DJI Terraの高精度3Dモデルマップは、マギル大学のARSLなどの機関に大きな前進をもたらしています。DJI Terraを使うと、LiDAR、写真測量、2D/3Dデータをすばやく処理して、実用的な洞察をパートナーに速やかに提供できます。ARSLでは、こうした技術の活用が先を見越した効果的な環境戦略に極めて重要であり、世界各地の多様な生物圏の理解を深め、保護を強化しています。

マギル大学応用リモートセンシング研究室とDJI Enterpriseのケーススタディをすべて視聴するには、以下をクリックしてください。

 

 

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Tags: 土木・測量, その他

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