800年の間、アイスランドのグリンダヴィーク近辺で、有名なブルーラグーンにも近い火山系列は休止期が続いてきました。しかし2021年に、地下で揺れが再開した徴候がありました。地震活動の活発化は、長いこと停滞していた噴火の可能性を示唆しており、かつてない難題に対して準備を整える必要に迫られました。2023年11月までに状況は劇的に悪化し、火山活動の脅威が常にあるため、人口3,800人のグリンダヴィークでは住人が避難を余儀なくされました。これが、アイスランドの緊急事態対応の転換点となりました。そして、DJI Dockソリューションが緊急事態対応の中心に据えられました。
地震活動が初めて活発化した時、Icelandic Civil ProtectionはUAS(無人航空機システム)機動チームを配備し、最大10機のドローンが投入されました。これらのドローンは必要な監視を実施したものの、このタスクはリソース集約的で、すでに限界に達している人員に無理な労力がかかりました。全国で警察官は700人しかいないため、より持続可能な解決策が必要であることは自明でした。最初の地震が発生してから数日後、自動化されたドローン イン ア ボックスシステムがグリンダヴィークに設置され、状況の監視方法が刷新されました。
「現在の状況下で安全を維持し、状況を認識し、住民・救急救援者・作業者・そのエリアに留まらなければならない人々の安全を保護するため、今こそドローンが重要と確信しています」-アイスランド警察技術支援国家委員会主任警部兼ドローンプロジェクトマネージャー
アイスランド警察技術支援国家委員会主任警部兼ドローンプロジェクトマネージャー
DJI Dockの稼働:緊急事態対応を強化
DJI Dockはすぐにその価値を証明しました。2023年11月16日に設置後、危機的なエリアにいつでもリモートからアクセスして、継続してリアルタイムで監視を実施しました。火山活動が活発化すると、DJI Dockは最初の情報源として、最新の現地映像を撮影し、さまざまなチームに対してライブストリーミングを提供しています。科学者、気象学者、緊急救援者は全員、ドローンの重要な情報にアクセスして、情報に基づいた意思決定をすばやく効果的に行うことができました。
2023年12月8日の夜に撮影された火山噴火の実際の映像
サーマルカメラ:変化する状況に対処
火山噴火時の最大の課題の1つに、急速に変化する環境を切り抜けられるよう、緊急救援者の安全を確保することがあります。グリンダヴィーク周辺は連続して地震に見舞われていたため、地割れや穴ができ、現場の人員に深刻なリスクをもたらしていました。インフラストラクチャチームがこのエリアに安全に入るには、DJI Dockによる事前の偵察が不可欠でした。DJI Dockはサーマルマッピング機能を備えるため、緊急救援者は事前に道路の地割れを検知して、安全かつ効果的に現場に到着することができました。 特にアイスランドでは、冬季の日照時間は8時間未満です。このような環境では、サーマルカメラが重要な役割を果たします。
DJI Dockのサーマルマッピング
火山噴火時のもう1つの重要な課題は、溶岩流による脅威を評価することです。グリンダヴィーク付近では噴火が頻繁に起きていたため、地表の古い溶岩と新しい溶岩を区別することが不可欠でした。DJI Dockのサーマルカメラがこれを可能にしました。溶岩の表面が低温で、黒く見えても、サーマルカメラはその下にある新しい溶岩の熱を感知できます。 この機能により、緊急救援者と建設チームは、どのエリアが安全かを判断し、作業時により良く安全を確保することができました。
さらにDJI Dockは、町周囲の防護壁を検査して、良好な状態にあるかを確認することもできます。防護壁は溶岩流から町を保護するよう設計されていましたが、頻繁に噴火が起る中、溶岩が地下から壁を突破するリスクが高まっていました。溶岩の突破はサーマルカメラでのみ検出することができるため、早期の介入が可能になり、壊滅的な結果を防ぐことができます。
地下の溶岩の熱画像と防護壁の突破
事前にプログラムされた飛行を毎日実施して連続監視
火山噴火は予測できないため、いつでも危険が起こり得ます。DJI Dockは事前にプログラムされた飛行を毎日実施して、火山活動が休止時にも継続的にモニタリングを実施しました。毎日の飛行で地形の変化が記録され、潜在的な脅威を早期に検知することができました。火山活動が停止し、噴火が発生していない時にも、ドローンの飛行は、新たな活動兆候を確実かつ適時に発見して、災害を防止するうえで特に重要でした。
ワンタッチ パノラマ同期:包括的な日次評価
リアルタイム監視のほかにも、DJI Dockのワンタッチ パノラマ機能は、日次評価に極めて有益でした。この機能により、毎日パノラマ写真を撮影し、溶岩流やインフラストラクチャ状態の変化を記録したことで、日々変化する地形の全体像を把握することができました。このような画像は、災害後の評価に不可欠であり、チームが各噴火の影響を把握し、より効果的な対策するのに役立ちます。
ライブ飛行制御:予測不能なシナリオにも柔軟に対応
多くのルートを事前にプログラムして、飛行を予定しても、緊急事態が必ずしも事前に定義された境界内で発生するとは限りません。DJI DockをDJI FlightHub 2と統合し、ライブ飛行制御機能を備えたソリューションを用意しました。予めプログラムされてたルートエリア外で予期しない状況が発生した場合には、パイロットはドローンを手動制御することができます。DJI FlightHub 2インターフェースの黄色い矢印をクリックするだけで、ドローンの方向を画面上の任意の場所にピンポイントで向けることができます。この使いやすい機能により、パイロットは変化する状況に即座に対応して、そのエリア全体をカバーし、不測の問題に迅速に対処することができます。
DJI FlightHub 2 ライブ飛行制御
高度なデータ共有による対応調整
危機的な状況では、各チーム間の調整が重要です。DJI DockをDJI FlightHub 2と統合すると、複数のユーザーが同時にライブデータにアクセスできるプラットフォームとなるため、調整が容易になりました。状況を分析している科学者、対応準備を進める建設チームなど、関係者が誰でも必要な時に必要な情報を入手することができました。
DJI FlightHub 2のメディア共有機能により、データ共有の範囲がさらに拡大されました。外部ユーザーもリンクをから各映像やフォルダー全体を表示でき、その際に登録は不要です。現地チームのメンバーは、現場の状況の画像をチームと簡単に共有することができました。こうしたシームレスな情報共有は、次々と明らかになる危機に対して対応を調整するのに役立ちました。
DJI FlightHub 2で共有
DJI FlightHub 2で共有
サードパーティ製ソリューションを併用して機能拡張
監視以外にも、DJI Dockは市民の安全確保に重要な役割を果たしました。ドローンにサイレンやストロボライトなどのサードパーティ製アクセサリーを装備して、グリンダヴィーク住民への早期警告システムとして活用しました。噴火が差し迫った際に、こうした機能を使って住民に警告を発し、安全に避難する貴重な時間的猶予ができました。サードパーティ製ソリューションの詳細については、カタログを参照してください。
使いやすいインターフェースで救援者のトレーニングを強化
アイスランドでは、警察や緊急救援者の数が限られているため、より多くの人に対してDJI Dockの使い方に関するトレーニングを提供する必要が生じました。幸いなことに、使いやすいインターフェースを備えるため、トレーニングプロセスが簡単になりました。現在、アイスランドのCivil Protectionは、緊急時に相互支援ができるよう、より多くの警官にトレーニングを実施しています。
緊急事態対応の新基準
グリンダヴィークで繰り返し発生した火山噴火により、アイスランドの緊急対応の限界が試されてきましたが、DJI Dockソリューションの採用により、状況は今も管理されている状態です。最先端技術を実際の用途に実地で統合することで、DJI Dockソリューションは緊急事態の管理方法に変革をもたらしました。Icelandic Civil Protectionは、危機的状況をリアルタイムで監視、評価、対応するために必要なツールを獲得して、救援者と住民の両方の安全を確保しています。
アイスランドは、不安定な状況によって生じる課題に今後も直面することになりますが、DJI Dockソリューションの成功により、世界的に緊急事態管理の詳細計画が提供されています。ますます予測不能になる世界では、適切なツールを自由に使えることが、混乱に陥るか、状況を管理できるかの別れ道となります。
詳細については、アイスランド警察国家委員会主任警部(Chief Inspector of the National Commissioner at the Icelandic Police)へのインタビューをご覧ください。