DJIのサーマルドローンは、警察活動、公益事業会社、石油ガス業界、危険物取扱者、また消防安全チームに詳細なリアルタイムのサーモグラフィ情報を提供することで、様々な業界に大きな影響を与えています。
サーマルドローンは、最新の熱センサーを使用して、生物と無生物が発する熱サインを検知します。その後、熱センサーは、視野内の対象が発する様々な熱の度合いを示す詳細な画像を生成します。
DJI Pilotで見たサーマルドローンによる映像
コストを削減し、時間を節約し、命を救うために、救急隊員がDJIのサーマルドローンを世界中で使用した5つの例をご紹介します。
アルゼンチンの石油精製所の点検・調査にDJIサーマルドローンを使用
サーマルドローンによるアルゼンチンの石油ガス精製所のサーモグラフィ画像
2015年以来、DJIドローンは、アルゼンチンの大手石油ガス会社により、石油精製所の点検・調査に使用されています。こうした施設は、広大な面積に広がる巨大な建造物で、火災、腐食、構造的損傷に大きな影響を受けます。
エンジニアは、定期的に巨大な石油ガス精製所の点検・調査を行い、システム全体の健全性を損なう可能性がある、潜在的な設備の問題を特定します。
ドローンを使用する前は、石油ガス会社は操業を停止し、ヘリコプターを手配して、そびえ立つフレアシステムを検査し、地上ベースのスタッフがエリア全体を目視検査しており、足場に上って損傷がないか確認していました。この危険な手順には、当然長い時間と多くのコストがかかりました。
ところが、石油ガス会社は、はるかに迅速かつ徹底的に施設を調査できるDJIのサーマルドローンを使用することで、時間を節約できました。会社は、インフラ点検に必要な人員と機材が減ったため、経費も節約できました。
DJIサーマルドローンが米フロリダ州で発生した化学物質の漏出事故で活躍
米フロリダ州サラソータで毒性が高い化学物質の漏出を止めるための準備をしている危険物処理班
2019年11月13日、米フロリダ州サラソータにある食品流通倉庫で、化学物質の漏出が発生したことを知らせる警報が鳴りました。地元のサラソータ郡消防署の危険物処理班が到着したとき、毒性が高い化合物 無水アンモニアのガスが立ち込めていることを知らされました。
化学物質の漏出を制御するために危険物取扱者を送り込む前に、危険物処理班の調整者は複数のDJIドローンを配備して、周囲を調査しました。そのときに展開されたドローンは、Mavic 2 Enterprise Dual、Zenmuse Z30サーマルカメラとXT RGBカメラを搭載したMatrice 210でした。
サーマルドローンは、最初に状況がどれほど危機的かを判断し、どのような装備を着用する必要があるかを決定するために送り込まれました。その時点で火災が発生していた場合、危険物処理班は、通常着用するゴムまたはプラスチック製で融点の低い化学物質用の装備ではなく、断熱された耐熱服を着用することになります。そのため、建物で火災が発生しているかどうかは重大な要素でした。
素早い接近通過の後、ドローンから倉庫内部の詳細なサーモグラフィ画像が送られ、危険物処理班は漏出が発生している箇所の鳥瞰図と影響を受けたエリアの詳細な様子を把握できました。ドローンのデータに基づいて、危険物処理班は素早く状況を把握し、漏出箇所に到達するための最善の方法を決定して、どのような種類の機材が必要かを確認しました。
結果としてドローンは時間を節約し、危険を減らして、非常に危険な状況の可視性を向上し、チームの仲間が危険な漏出を止めている間、指揮を執るクルーにミッションの連続的な映像を届けました。
DJIサーマルドローンが米アーカンソー州で発生した化学物質の火災で活躍
米アーカンソー州ベントンで、迫りくる炎から薬品タンクを守るために水をかける消防士
2019年12月4日、米アーカンソー州ベントンビルにある工場で火災が発生しました。非常に燃えやすいプラスチック製品の入った4つの巨大サイロに火が付き、有毒な煙がもうもうと立ち込めはじめました。また、燃え盛る炎が、35,000ガロン(132,489リットル)のジフルオロエタンという引火性が高く、爆発性の化学物質が入ったタンクのある方に広がって来ていたため、事態は悪化しました。
消防士はすぐに、企業用ドローン技術のエキスパートであるUnmanned Vehicle Technologies (UVT) の支援を要請しました。同社は消防士や救急隊員の経験者が設立した会社でした。到着後、UVTのクルーは、DJIサーマルドローンを何機も飛ばしました。状況がどれほど危機的かを見極めるため、化学物質の貯蔵コンテナに近づき、温度を測定しました。タンクが爆発寸前である場合、クルーを送り込んで直接消火活動を行うのは危険すぎます。
サーマルドローンは、化学物質容器の360度の温度測定値を消防士に伝えるだけでなく、火の広がり方を正確に示しました。この重要な情報を得た消防士は、迅速に突入し、安全に消火できました。何より、揮発性化学物質のタンクが爆発するのを防ぐことができました。
DJIサーマルドローンがウクライナのチェルノブイリ近くで発生した森林火災の消火で活躍
現在は使われていないチェルノブイリ原発の近くで発生した森林火災に消防士が出動
2020年4月、ウクライナで森林火災が発生し、史上最悪の核災害が起き、現在は使われていないチェルノブイリ原子力発電所の周囲の立入禁止区域にまで広がる危険がありました。この火災を迅速に食い止めなければ、直接キエフ市に何トンもの放射能灰が降る可能性がありました。
大惨事を回避するために、消防隊は意を決して素早く行動しなければならない深刻な事態でした。幸い、救急隊は、RGBカメラとサーマルカメラを搭載した2機のMavic 2 Enterprise Dualドローンを含む、一団のドローンを利用できました。救助隊員は直ちにDJIドローンの熱画像を使用して、立ち込める何層もの煤と煙を突破し、火災が起きている場所を見つけ、火災の広がり方を正確に特定しました。
濃い煙の上でホバリングしたサーマルドローンは、司令部にリアルタイムの映像を素早く中継したため、司令部は安全に潜在的な危険箇所を判断して、空中給油機、ヘリコプター、消防車、消防士を適所に展開できました。
配置についた大勢の消防士と消防車は、地上で消火にあたり、その間、有人機が最終的には538トン(488メトリックトン)の水を急速に広がる火災の前線に投下しました。
救急隊は疲労困憊しつつも、ついに森林火災を消し止め、大惨事を未然に防ぎました。
DJIサーマルドローンがベトナムでの捜索救助活動で活躍
2020年10月、ベトナム中部は集中豪雨による洪水に見舞われました。実に、90インチ (2,290 mm) を超える雨が降った場所もありました。その結果、絶え間ない洪水と予測できない地滑りのため、数百万人が影響を受け、百人以上が命を失いました。
台風によりさらに雨が降り続く中、地滑りで遠隔地にある水力発電所が厚い泥の層に埋もれ、瓦礫のため、崩れた建物内に作業員が閉じ込められました。現場に駆け付けた救急隊員も地滑りで活動ができず、状況が悪化しました。救急隊員の安全を確保するため、指揮を執っているリーダーは、AGS Technologies(DJI正規販売代理店)から提供されたサーマルドローンを使って生存者の位置を確認し、地形的に危険な場所の地図を作ることにしました。
現場に到着したAGS Technologiesは、2機のドローンを飛ばして生存者を捜索しました。Matrice 300 RTK (M300 RTK) には、最新のZenmuse H20Tサーマルカメラを搭載し、もう一台のMavic 2 Enterprise Dualには、RGBカメラを搭載していました。
飛び上がったドローンは、生存者の熱サインを探してその地域をスキャンし、水浸しのリアルタイムの地形のフィードバックを救急隊に送ることができました。
地滑りが発生している遠く離れた山間部にドローンを展開して、AGSチームは非常に危険なミッションで時間を節約し、そのおかげで救われた命もあったことでしょう。
まとめ
今やDJIのサーマルドローンは、世界中で救急隊の頼れるツールとなっています。その操作性とミッションクリティカルなデザインにより、これらのドローンは空中から優れたリアルタイムの映像を取得し、命を救うだけでなく、時間と経費の節約にも役立っています。
サーマルドローン技術が向上するにつれ、その用途はドローンが最初に知られるようになった、消火や捜索救助活動以外にも広がり続けています。最近では、農家がサーマルドローンを使って耕地を分析し、牧場経営者は家畜の管理に活用し、公益事業会社は送電線の点検に利用しています。未来を見据えた、このような高度なUAVのメリットが将来に向けて拡大して行くことは確実です。
サーマルドローンに関する詳細は、当社のサーマルドローンの基礎およびサーマルドローン ガイドブックをご覧ください。